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埋み火
第3章 跳ね火
 ワンルームにテーブルとベッドとテレビ、そして小さなドレッサーしか置いていないシンプルな部屋で、互いに上着を脱ぐと二人はベッドに密着して腰を下ろした。


「まったく、お前は最近ほんとうにエロいぞ」

「エッチな私が、好きなんでしょ」

「うん」


 会うなり女が男を壁に押しつけ、跪いてフェラチオするなどAVや男に都合のいい官能小説の世界でしかありえないシチュエーションだと思っていた。

 今度はいつものように腰を抱いてそっとキスをする。


「拗ねたり泣いてるより、エロいきりがいいよ」

「じゃあ、泣かせないでよ」

「ばーか」


 舌を挿し入れると、先ほどの激しさとはうってかわってそっと霧子は吸いかえした。


「だいたいな、いつもお前は年下のくせに生意気なんだよ」

「何よ、相手がおじいちゃんなんだもの。しょうがないでしょ」

「ふふ」

「うふふ」


 くすくす笑いあってお互いのからだに触れながらのキスは、続けていくうちにどんどん熱を帯びてお互いを蕩かしていった。


「また、いい女になってる」

「え?」

「今日もほんとに可愛いよ。こりゃ課長もむらむら来るわな」

「もう、やめてよ」


 こういうときに恥ずかしがって視線をそらす癖は抜けないようだ。

 だが、本当に霧子はどんどんきれいになっていく。

 初めて上野駅で会った日に「可愛い、欲しい」と思ったが、今はそれ以上に霧子のすべてが魅力的だ。

 そして同じくらい「自分にはもったいない」と思う。

 霧子は吸いあっていた舌をほどき、また博之の肩に額を乗せて熱く丸い息を吐く。


「ほら、また目がトローンとした」

「やぁ」

「おい、いきなりあんなことしたのに、今さらまた恥ずかしがる気か?」

「うん、そうよ」


 博之の胸に手を置くと、愛おしそうな視線で見上げてくる。


「ひろ」

「……きり」
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