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埋み火
第3章 跳ね火
 いつもは博之が横になれば即、霧子はその上に乗ってひと通りのことを始める。

 だが今日は霧子は横に自分も寝ころんだ。


「上に乗って長くするとね、肘が疲れちゃって」

「うん」

「ゆっくり、しよ」


 ふたりは寝たまま向かい合ってゆっくりキスを始めた。

 初めて上野駅で会った日に「いいな」と思った唇だが、変わらず形もよく「こんなキス、毎日してみたい」と思えた。

 霧子が冗談めかして「宝くじが当たったら、新宿にマンションでも買うわ」と言ったことがあるが、そんなことになったら毎日、朝に夕にとキスだけでもしに寄ってしまいそうだ。

 肘をつかなければ確かに霧子の両腕は自由に動くらしく、博之の乳首と股間をそれぞれの手で同時にいじりながら舌で博之の歯列や舌を舐め回した。


「はぁ、蕩ける……」


 もし本当に毎日、霧子とキスができるのなら、往復三時間以上の通勤も地獄ではなくなるかもしれない。

 自宅の近所にあった本社から新宿に異動になって以来、休職するほどメンタルの調子も悪くなるしろくな目に遭わなかったが、新宿勤務だからこそ霧子にもこうして会えるのだ。
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