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埋み火
第3章 跳ね火
 霧子が自分の挿入と愛撫でオーガズムを得られたのは、博之にとっても大きな喜びだった。


「きり、今ほんとにイっただろ」

「はぁっ、ああっ、うん……」


 硬く屹立したものを霧子のクレバスにうずめたまま、見やれば切れ長の美しい目じりには涙が浮かんでいる。


「よかった、やっときりが気持ちよくなってくれた」

「最初からずっと、ひろとしてるときは気持ちよかったよ。でも今日は、本当に幸せ……」

「そっか。俺もそろそろいい?」

「うん、いっぱい、いっぱい、私の中に出して」

「わかったよ」


 射精など、これだけ霧子がオーガズムを迎えたあとではおまけのように思えた。

 しっかり霧子を抱きしめ直す。


「エッチな小説みたく、一緒のタイミングでイけるとは限らないのね」

「そのうち同時にイけるさ」

「エンジニアさんがきっと、そういうふうに私を調整してくれるのかな」

「そうだな、研究しとくわ。……きり」


 名を呼んで何度も何度もキスした。


「俺の、きり」

「うん……」

「俺のだからね」


 自分がされるのがいやだから、女のことを束縛するのはもともと嫌いだ。

 自分の妻ですらそんなことはせず自由にやってほしいと思っている。

 しかもやっと自由を得て外に出た、「これから」の明るい未来が待ち受けている霧子なのだから、またそれが鎖につなぐ言葉になるとはわかっているのだが、今しばらくは霧子を他の男には触れさせたくない。


「もう、出そうだ」

「いいよ……きて、ひろ」


 短時間だったが力強いピストンの果てに、博之は霧子の中にいままでにないほどの量の精液を放った。

 霧子はその激しい動きでまた絶頂を迎えたらしく体がびくりと小さく跳ねた。


「俺のだ、俺のもんだ……」


 うわごとのように博之は繰り返した。


「そんな、課長になんかやれるか。俺のだ」


 どくどくと、夢想するしかなかった、霧子の内奥に精を放ちながら霧子をかき抱く。


(やっと見つけたんだ)
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