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埋み火
第3章 跳ね火
「これ、若い子に人気のブランドね」


 紙袋に箔押しされたロゴを見て、霧子は「よくこんなブランドを知っていたものだ」と驚いた。

 いくら安価なカジュアルブランドとはいえ、普段なにも贅沢していない男が……と思うと、嬉しいよりも先に何か心配をしてしまう。

 袋の中からはリボンをかけた、小さな箱が出てきた。

 おそるおそる開けると、ピンクゴールドのシンプルなリングがその姿をのぞかせる。


「……可愛い」

「プラチナって高いからさ、シルバーのメッキなんだ。ごめんな」

「ううん……」


 とにかく一番安い価格帯の中から選んだことを博之は謝ってきたが、霧子は感極まりまた涙ぐんだ。

 一生懸命、どうにかやりくりするなり、趣味で若いころから集めているギターの機材を売るか貯金を崩すなどして買ってくれたのだろう。

 毎週末は家族につきあってショッピングモールには行く男だが、まさかその際に貴金属店に行くこともできないだろう。

 そんな男が時間を工面して、財布の中身に見合ったブランドを探したというだけで霧子は幸せな気持ちになった。


「おい。ほんとにこれ、一万もしない安物なんだぞ」

「そんなこと、どうでもいいわ。旦那から適当に買ってもらった指輪より、ずっと嬉しい」
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