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埋み火
第3章 跳ね火
博之から初めてもらったプレゼントは、自分の手に何よりも似合うファッションリングだった。
それを左の薬指に嵌めてもらうと、その後にはキス。
(まるでひろのお嫁さんになれた、みたい)
いい歳をして、妻子のいる男とそんな「ごっこ」をして喜ぶのはばかげているだろう。
こんなお遊びで、今はいいのだと霧子は思っている。
博之とつきあいだしてから、いまが最も満ち足りていた。
体内にはまだ博之の放った精が残っている中で、指には博之が選び、嵌めてくれた指輪がひそやかに光を放っている。
このうえ、朝まで一緒に眠ることができるのだ。
嬉しい、とつぶやいたら博之が突然おおいかぶさって抱きしめてきた。
「きり、かわいい」
博之の顔は自分の肩の陰で見えなかったが、その鼻声は震えていた。
「ひろ、どうしたの? 私、なにか変なこと言った?」
男が泣くなどよっぽどのことだ。
霧子は不安になった。
「ほんとに、かわいい。かわいい」
ただ、博之が自分にしがみついて洟をすすり、うわごとのように名を呼ばれるので、霧子は指輪の嵌った左手で背中をさすってやり続けた。
それを左の薬指に嵌めてもらうと、その後にはキス。
(まるでひろのお嫁さんになれた、みたい)
いい歳をして、妻子のいる男とそんな「ごっこ」をして喜ぶのはばかげているだろう。
こんなお遊びで、今はいいのだと霧子は思っている。
博之とつきあいだしてから、いまが最も満ち足りていた。
体内にはまだ博之の放った精が残っている中で、指には博之が選び、嵌めてくれた指輪がひそやかに光を放っている。
このうえ、朝まで一緒に眠ることができるのだ。
嬉しい、とつぶやいたら博之が突然おおいかぶさって抱きしめてきた。
「きり、かわいい」
博之の顔は自分の肩の陰で見えなかったが、その鼻声は震えていた。
「ひろ、どうしたの? 私、なにか変なこと言った?」
男が泣くなどよっぽどのことだ。
霧子は不安になった。
「ほんとに、かわいい。かわいい」
ただ、博之が自分にしがみついて洟をすすり、うわごとのように名を呼ばれるので、霧子は指輪の嵌った左手で背中をさすってやり続けた。