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埋み火
第1章 忍び火
 ワイシャツと肌着を急いで脱いでから、上半身が裸になった霧子をベッドに横たえると、博之は覆いかぶさり音を立てて霧子の乳首を吸い始めた。

 陥没ぎみの小さな霧子の乳首は、優しく吸いだされてすぐに硬く立つ。

 いつもこのような始まりで、ただ丁寧に吸われているだけだが霧子はそれだけでもうたまらなくなってしまう。

 あまり乳房ぜんたいで感じるタイプではないが、敏感な先端を大好きな厚めの唇で刺激されればまた強く疼く。

 技巧も何もいらない、ワンパターンでもいい。

 今だけは博之は自分のものだ。

 会えない間、寂しさだけではなく嫌な想像や嫉妬ばかりして苦しさに押しつぶされそうになった霧子は、唇を重ねてベッドに横たえられてやっとそれらの感情から解放される。

 博之の重みを感じ、腕の中に抱かれているときだけは間違いなく「私は女だ」と思えるようになった。




 いかにも、なA型マニュアル人間の博之は毎回だいたい右の乳首を舌で味わいながら左を指でつまむ。

 わざとチュッと音を立てて吸い、そうこうしているうちに手が下にのびる順番になっている。

 スカートの中に手が入りこみ、薄い布の上から割れ目を指でなぞると必ず「気持ちいい?」と聞いてくるのは不思議だと霧子は思う。


(どうして男の人って、下着の上から触りたがるのかしら。後でまた履くとき、汚れてしまうから気持ち悪いのだけど)


 こんなふうに雑念ばかりだから自分はきっとまだ「イく」のがいつ、どのようなところまで行き着くことなのかよくわからないのだろう、とも思う。

 セックスが気持ちいいことは気持ちいいのだが、博之の手順がいつも同じことに気付いたら気付いたで、それを思い出して「次はどこを触るのか」など考えてしまう。
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