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埋み火
第1章 忍び火
『飲まなくてもよかったのに。吐きだしていいんだぞ』

『どうして? 好きな人のものなら、いくらでも飲めるわ』


 射精後も優しく口に含み続ける霧子を見て、「そんなもんなのかな」と博之は不思議そうだった。

 霧子こそ、いつも不思議に思う。


(奥さん、どうして舐めてあげないのかしら。臭くもないし、博之のはこんなにおいしいし。してあげたらすごく喜んでくれるのに、ばかね)


 毎回、気にしやすい性分の博之は舐めてもらう前に「臭くない?」と霧子に確認する。

 お世辞ぬきで霧子は鼻から不快感を覚えたこともなく、愛おしい男のものを本人にもうやめろと言われるまでずっと口に含んでしゃぶり続けている。

 演技でもなく舐め回しているときはおいしいと思っているし、デートから半月も経って生理が近づくころになると博之の陽物が脳裏にちらつき、彼のものを今すぐ口に含みたいと思う。

 口内でぴくぴくと動く陰茎からあふれる液も、陰茎そのものも自分だけのものにしたい。

 その、口の中で果てさせたときは、脈動が収まってもずっと口に含んでいた。

 博之は今までセックスで女性にろくに優しくされたことがないと言うので、丹念に毎回たっぷりとフェラチオをしてやりたいのだが、元来の早さゆえにすぐ射精しそうになるのでしかたなくまだ途中でやめさせられるというお粗末な事情である。
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