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埋み火
第1章 忍び火
(ああ、他の男にはまだやりたくないな)


 霧子の優しさも体も、しばらくは独占していたい。

 妻に口でしてもらったのはたったの数度、それもすぐ口からいやそうに出された身としては、毎回たっぷりと心身が蕩けるまで可愛らしい唇で尽くしてくれる、腰が抜けそうなほどの快感を何度ももたらしてくれる霧子を手放したくはない。


(そうだな、ちゃんと稼ぎがよくて見た目もイケメンで若い奴がきりを見初めたんなら、そいつに譲ってやる。だけど、今は俺のものだ)


 何とも身勝手なことを考えていると、霧子がまた上にあがってきて唇を寄せてきた。


「む、ふぅっ」


 硬くいきり立ったままの肉茎は絶えず手でしごき上げられながら唇を吸われる。

 こんな幸福を与えてくれる女をそうそう手放せるものではない。

 実際いま霧子がいなくなれば、また激務や通勤地獄と家庭での抑圧という泥沼に沈んで這い上がることもできなくなるのが容易に想像できる。

 いちど「いたわってくれる女」ができてしまうと、孤独に耐える力が弱くなる。

 以前に心を病んだときはどうやってそこから脱したかの記憶も、どこか遠くにいってしまったようだ。

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