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埋み火
第2章 熾し火

翌日の日曜には霧子は自分のよく行くフレンチの店に電話をかけ、賢治と会う日のディナーを五時に予約しておいた。
ショートメールでそれを伝えると、あの情熱的に車内で口説かれたのは夢だったのかというほどそっけなく「了解」とだけ返事が来たが、家族が父親のスマホをいじって見ることもあるからかもしれないと自分を納得させ、そうこうしているうちに平日も終わりデート当日になった。
迷ったが、いつも通りの自分で行こうと思い霧子は黒いブラウスとチェックのタイトスカートに先週と同じ白いスニーカーにした。
京都の中を歩くのだったらやはり靴は楽なほうがいい。
それに以前使っていたピンクのボストンバッグを合わせようとクローゼットから引っ張り出してきた。
どこが中央口なのか少し迷ったらしく、賢治は定刻より少し遅れてきょろきょろしながら改札を出てきた。
先週と同じジーンズに今度は紺色のポロシャツを着て小さなショルダーバッグを肩からかけていた。
「今日も晴れたやろ」
「うん」
「荷物、先に預けよっか。持ったままだと重たいやろ?」
そう言って賢治は「こっちこっち」と歩き出したが、すぐにホテルに着いた。
そこは京都駅と直結した市内でもトップクラスの高級ホテルだったので、霧子は驚いた。
「賢治さん、ここってすごく高いんじゃ」
「いや。この前ゴルフコンペで旅行券が当たってさ。せやからお金はかかってへんよ」
「家族旅行で使えばいいのに……」
「それがなぁ。四人で使うには足りひんくて、二人だとこうやって高いホテルに泊まれる額やってん。だから、ぱっと使ってまうよ」
霧子の肩からボストンバッグを掴むと賢治はフロントに歩いて行って何やら伝票を書いて戻ってきた。
「チェックインは三時からで、でも荷物は部屋に入れといてくれるんやて。じゃあ晩ご飯までぶらぶらしよか」
「……うん、いかにもな観光コースでいい?」
「全然ええよ。俺、接待とかで飲みには行ったけど、よう考えたら京都で就職してからきちんと観光ってあんましてへんかったのよ。だからしてみたいわ」
ショートメールでそれを伝えると、あの情熱的に車内で口説かれたのは夢だったのかというほどそっけなく「了解」とだけ返事が来たが、家族が父親のスマホをいじって見ることもあるからかもしれないと自分を納得させ、そうこうしているうちに平日も終わりデート当日になった。
迷ったが、いつも通りの自分で行こうと思い霧子は黒いブラウスとチェックのタイトスカートに先週と同じ白いスニーカーにした。
京都の中を歩くのだったらやはり靴は楽なほうがいい。
それに以前使っていたピンクのボストンバッグを合わせようとクローゼットから引っ張り出してきた。
どこが中央口なのか少し迷ったらしく、賢治は定刻より少し遅れてきょろきょろしながら改札を出てきた。
先週と同じジーンズに今度は紺色のポロシャツを着て小さなショルダーバッグを肩からかけていた。
「今日も晴れたやろ」
「うん」
「荷物、先に預けよっか。持ったままだと重たいやろ?」
そう言って賢治は「こっちこっち」と歩き出したが、すぐにホテルに着いた。
そこは京都駅と直結した市内でもトップクラスの高級ホテルだったので、霧子は驚いた。
「賢治さん、ここってすごく高いんじゃ」
「いや。この前ゴルフコンペで旅行券が当たってさ。せやからお金はかかってへんよ」
「家族旅行で使えばいいのに……」
「それがなぁ。四人で使うには足りひんくて、二人だとこうやって高いホテルに泊まれる額やってん。だから、ぱっと使ってまうよ」
霧子の肩からボストンバッグを掴むと賢治はフロントに歩いて行って何やら伝票を書いて戻ってきた。
「チェックインは三時からで、でも荷物は部屋に入れといてくれるんやて。じゃあ晩ご飯までぶらぶらしよか」
「……うん、いかにもな観光コースでいい?」
「全然ええよ。俺、接待とかで飲みには行ったけど、よう考えたら京都で就職してからきちんと観光ってあんましてへんかったのよ。だからしてみたいわ」

