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埋み火
第2章 熾し火
 駅前から祇園行きのバスに乗り、着いた先でこれもほんとうにありがちな抹茶のスイーツを食べる店に行ったり、神社や寺を拝観した。

 そこでも賢治は霧子の手や腰に始終触れて、たまに霧子が「こんなことをして、どんな顔なんだか」と思って見上げるとこれ以上ないくらい相好を崩しきっていた。

 花見小路にある、古民家を改造したアクセサリーショップの前を通ったときに、霧子は「あっ」と声をあげた。


「どしたん?」

「このお店、ここじゃなくてデパートに入ってるところで、若いときたまに買ってたの。高いヘアピンとかばっかりなんだけど、モノがいいし壊れてもタダで直してくれるのよ。それに店員さんがいろいろ髪の毛のまとめ方を教えてくれるし」

「じゃ、見よっか」


 霧子の手を握ってその店の玄関をくぐり、賢治は高級なバレッタやカチューシャのたくさん並ぶ棚を見て「何をどう頭に使うのか、さっぱりわからんなあ」と笑った。


「あ、これはええね。霧ちゃんに似合いそうや」

「そちら、秋冬の新作になっております」


 紫色のバレッタを指さすと、店員に「つけてあげてください」と賢治は頼んだ。


(つけるだけなら、いいかな)


 確かにその新作とやらのバレッタは霧子の好みの色で、紫の土台に金色のラメがちらちらと光り全体的に上品な光沢を帯びていた。

 若いころは夫の好みに合わせてロングヘアでいたためこのようなアクセサリーでまとめ髪を楽しんだりもしたが、逃げてくるときにはすべて手放して髪を短く切った。

 今でこそこうしてやっと肩につくくらいまで伸びたが、十年前と変わらず強気な値段をつけた高級ヘアアクセサリーたちを見ていると「不況とか流行はあっても、私だけがいろいろ失って、変わったのかな」と思えた。
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