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埋み火
第2章 熾し火
(え? 男の人ってこんなに乱暴なの)


 男といえば、優しい博之と性に淡泊だった夫くらいしか知らない霧子はこんなに直情的で自分の性欲に正直なキスがあるのかと驚いた。

 そして、キスだけで感じて抱かれたくなってしまっていた自分が今日はどこにもいないことにも驚愕した。


「ようやっと俺のもんになってくれるの、嬉しいよ」


 賢治の鼻息はますます荒く、唇だけでは物足りないといったふうにじゅるじゅると音をたてて頬や耳たぶまでもをしゃぶりだす。

 動物に顔を舐め回されているようだった。


「ふぅ、んむっ、ふぅ……霧ちゃん……霧ちゃんのキス、すごくおいしいよ」


 霧子の口内を舌でかき混ぜながら、賢治は声を漏らした。

 我慢できないといったふうに霧子を押し倒してのしかかり、腰を動かして怒張した股間を霧子のふとももに押しつけだす。


(やだ、何これ……)


 ジーンズのごわごわした生地の奥にある硬くなった熱い肉塊を感じて霧子は怖くなった。

 体をひねって逃れようとしても、両手首をしっかりと賢治は押さえつけて仰向けにしたまま息も荒く唇や首すじを味わいつづける。

 箱の中にピンで縫い留められた昆虫標本をふと霧子は思い出した。

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