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忘れられし花
第4章 松永
だが、夜はまだ明けてはいなかった。
離れに戻った直後、寝室からお方様の悲鳴が聞こえた。普段、大声を出すことすらないお方様だ。何か尋常ではないことが起こったに違いない。
奏は寝室へと急いだ。
足を踏み入れた寝室は、言葉にできないほどの惨状だった。
「松永! 松永!」
そこには松永が大量に吐血し、倒れていた。すでに命がないことはすぐにわかった。
畳は一面真っ赤な血の海で、松永を抱えて呼び掛けるお方様も血まみれだった。目の不自由なお方様は、自分が血まみれなことも、松永がすでにこと切れていることにも、気づいていないようだった。
「お方様!」
肩を掴み、強く揺さぶってはみたが、全く反応はない。
「松永! 松永!」
お方様は何度も松永の名を呼び、血まみれの手で、必死に奏に縋りついた。
「お方様を頼みます」
松永の名を叫び続けるお方様を、駆けつけた他の使用人に委ね、奏は再び本館に走った。
離れの事情を知る、執事の井上に頼るしかなかった。
離れに戻った直後、寝室からお方様の悲鳴が聞こえた。普段、大声を出すことすらないお方様だ。何か尋常ではないことが起こったに違いない。
奏は寝室へと急いだ。
足を踏み入れた寝室は、言葉にできないほどの惨状だった。
「松永! 松永!」
そこには松永が大量に吐血し、倒れていた。すでに命がないことはすぐにわかった。
畳は一面真っ赤な血の海で、松永を抱えて呼び掛けるお方様も血まみれだった。目の不自由なお方様は、自分が血まみれなことも、松永がすでにこと切れていることにも、気づいていないようだった。
「お方様!」
肩を掴み、強く揺さぶってはみたが、全く反応はない。
「松永! 松永!」
お方様は何度も松永の名を呼び、血まみれの手で、必死に奏に縋りついた。
「お方様を頼みます」
松永の名を叫び続けるお方様を、駆けつけた他の使用人に委ね、奏は再び本館に走った。
離れの事情を知る、執事の井上に頼るしかなかった。