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忘れられし花
第4章 松永
奏は体を揺さぶられ、ふと目を覚ました。
ぼんやりと目を開けると、お方様が奏の体を揺さぶり、名を呼び続けていた。
僕は……。
奏は記憶を辿った。深夜、お方様の身を清め新しい布団に寝かせたところで記憶が途絶えていた。
「お方様、すみませんっ!」
奏は飛び起きた。ここはお方様の寝室だった。しかも奏はお方様の膝の上で眠っていた。慌てて立ち上がろうとしたところ、お方様に引き寄せられて強く抱き締められた。焚き染めた上品な香が、奏を包む。
お方様は怯えたような、泣き出しそうな顔をしていた。
「松永だけでなく、あなたまで逝ってしまったかと思いました……」
お方様は既に松永の死を理解していた。そして奏がお方様の上で眠っていたので、もしかしたら奏も死んでいるのではないかと、不安に駆られたに違いない。奏が目覚めるまで、どんなにか心細かったことだろう。
「大丈夫です。僕がお方様を置いて逝くわけありません」
奏はお方様を安心させようと、華奢な背中に腕を回した。だがお方様は幼子のように激しく首を振った。
「いいえ。きっとあなたも私を置いて逝ってしまうに違いありません……」
不意にお方様の体から力が抜け、奏は慌ててお方様を抱きかかえた。
「お方様!」
おそらく緊張が限界に達していたであろうお方様は、蝋燭の灯が消えるように意識を失った。
ぼんやりと目を開けると、お方様が奏の体を揺さぶり、名を呼び続けていた。
僕は……。
奏は記憶を辿った。深夜、お方様の身を清め新しい布団に寝かせたところで記憶が途絶えていた。
「お方様、すみませんっ!」
奏は飛び起きた。ここはお方様の寝室だった。しかも奏はお方様の膝の上で眠っていた。慌てて立ち上がろうとしたところ、お方様に引き寄せられて強く抱き締められた。焚き染めた上品な香が、奏を包む。
お方様は怯えたような、泣き出しそうな顔をしていた。
「松永だけでなく、あなたまで逝ってしまったかと思いました……」
お方様は既に松永の死を理解していた。そして奏がお方様の上で眠っていたので、もしかしたら奏も死んでいるのではないかと、不安に駆られたに違いない。奏が目覚めるまで、どんなにか心細かったことだろう。
「大丈夫です。僕がお方様を置いて逝くわけありません」
奏はお方様を安心させようと、華奢な背中に腕を回した。だがお方様は幼子のように激しく首を振った。
「いいえ。きっとあなたも私を置いて逝ってしまうに違いありません……」
不意にお方様の体から力が抜け、奏は慌ててお方様を抱きかかえた。
「お方様!」
おそらく緊張が限界に達していたであろうお方様は、蝋燭の灯が消えるように意識を失った。