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忘れられし花
第8章 悪夢の再来
 その時。

 室内に元久の絶叫が響き、一瞬で静かになった。
 無言で部屋に踊りこんできた人影。

 元久を一刀で斬り捨てたのは、執事の井上だった。右手に下げた刀からは赤黒い血が滴り、その下に小さな血だまりを作っていた。
 そこへ馨が少し遅れて飛び込んできた。室内の状況から何が起こったのか即座に理解すると言葉もなくその場に立ち尽くす。

「一刻を争う事態と見受けられましたので斬らざるを得ませんでした。申し訳ございません」
「……許す」

 激しく咳き込む光の喉元にはくっきりと赤い指の痕があった。あと少し井上が遅かったら、きっと光は殺されていた。

「光様!」

 井上に縄を切ってもらった奏は脇目も振らず光の傍へ駆け寄った。光に覆い被さったまま動かない元久の体をどける。すると井上が布団から剥ぎ取った敷布で傷ついた光の体を隠した。光も今の自分の体を馨に晒したくはないだろう。奏は井上の配慮に感謝した。

「谷……山……。無事、ですか……?」

 光は震える手を伸ばして奏に触れた。

「僕は無事です!」
「あなたが、無事で、よかっ……た……」

 光は奏を気遣った。激しく震えながらも、自分のことより、ただ奏の安否だけを気遣った。そして奏の無事を知ると安堵の笑みを見せ、意識を失った。

「馨様。光様は彼に任せましょう」

 光に駆け寄ろうとした馨を、井上が引き止めた。

「でもっ!」
「馨様ならこのような姿を光様にお見せになりたいですか?」

 馨は沈黙した。

「そうだな。兄上の名誉のためにも、私はこの場にいなかったことにする。谷山、兄上を頼む」

 馨はきつく唇を噛んだ。乱暴され辱しめを受けた姿を馨に見られたと知ったら、光は羞恥に苦しむだろう。だから、馨はここには来なかった。その方が光のためだ。

「はい。……失礼します」

 奏は馨と井上、そして二度と動かなくなった元久を残して部屋を後にした。
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