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忘れられし花
第9章 悪夢を越えて
「光様。そんなに身構えないでください」
綺麗な水色の目を開けたまま静かに座る光からは、傍目にもその緊張が手に取るように伝わってくる。
「目は閉じていていいですから。いえ、むしろ閉じてください」
間近に見る水のように透明な光の瞳は、奏の心の奥まで見透かしてしまいそうだ。
光は頷いて、長い睫毛に縁取られた綺麗な目をゆっくりと閉じた。繊細で儚げな雰囲気の光は、目と髪の淡い色彩と相まって、まるで綺麗な西洋の陶器人形のようだった。
奏は緊張のため本物の人形のように動かない光の横髪をかき分け、露になった耳朶を甘く噛んだ。
「あっ……!」
びくん、と光の体が震えた。
息を吹きかけるようにしながら何度も繰り返し噛むと、光は恥ずかしげに体を固くした。耳が赤く染まっている。
「気持ちいいことは悪いことなんかじゃありません。気持ちいいなら、気持ちいいって言っていいんです、光様」
それでも俯き体を固くして黙り込む光を、正面に回り込んで優しく抱きしめる。
「光様の好きにしていいんです。でも、あんなに情事を怖がっていた光様が、僕に抱いて欲しいて言ってくれたんです。だから僕は、男娼だった頃の技を全部使って、全力で光様に気持ちいいって言わせてみせますから!」
奏は力一杯宣言した。
「男娼……?」
光は不思議そうに首を傾げた。
「あれ? 松永さんに聞いてなかったんですか? 僕、ここに来る前は男娼館で春を売ってました」
「春を売る?」
光は男娼も売春も、まったく知らないようだった。他人と隔てられて暮らしてきた光は、生まれてから一度も鷹取邸から出たことがない。そして、松永が光に男娼のような下世話な言葉を教えているはずもない。
奏は光に、男娼と売春について、一から説明する羽目になってしまった。
綺麗な水色の目を開けたまま静かに座る光からは、傍目にもその緊張が手に取るように伝わってくる。
「目は閉じていていいですから。いえ、むしろ閉じてください」
間近に見る水のように透明な光の瞳は、奏の心の奥まで見透かしてしまいそうだ。
光は頷いて、長い睫毛に縁取られた綺麗な目をゆっくりと閉じた。繊細で儚げな雰囲気の光は、目と髪の淡い色彩と相まって、まるで綺麗な西洋の陶器人形のようだった。
奏は緊張のため本物の人形のように動かない光の横髪をかき分け、露になった耳朶を甘く噛んだ。
「あっ……!」
びくん、と光の体が震えた。
息を吹きかけるようにしながら何度も繰り返し噛むと、光は恥ずかしげに体を固くした。耳が赤く染まっている。
「気持ちいいことは悪いことなんかじゃありません。気持ちいいなら、気持ちいいって言っていいんです、光様」
それでも俯き体を固くして黙り込む光を、正面に回り込んで優しく抱きしめる。
「光様の好きにしていいんです。でも、あんなに情事を怖がっていた光様が、僕に抱いて欲しいて言ってくれたんです。だから僕は、男娼だった頃の技を全部使って、全力で光様に気持ちいいって言わせてみせますから!」
奏は力一杯宣言した。
「男娼……?」
光は不思議そうに首を傾げた。
「あれ? 松永さんに聞いてなかったんですか? 僕、ここに来る前は男娼館で春を売ってました」
「春を売る?」
光は男娼も売春も、まったく知らないようだった。他人と隔てられて暮らしてきた光は、生まれてから一度も鷹取邸から出たことがない。そして、松永が光に男娼のような下世話な言葉を教えているはずもない。
奏は光に、男娼と売春について、一から説明する羽目になってしまった。