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忘れられし花
第9章 悪夢を越えて
「ここです、光様。光様が僕を触ってくれると、僕も気持ちよくなれるんです」
自身の昂りが限界に近づいたのを感じた奏は、光の手を取り体の中で敏感なところ、触って欲しいと思うところに触らせた。触ってくれとは言ったものの、光は情事の際、おそらく自分から相手の体に触れたことがないのだということに気づいたからだ。だから奏自らが光の手を導いていく必要があった。
光の細い指で触れられながら息を荒げる奏を間近に感じ、光もようやく、一方的なものではない、互いの体と心が通い合う情事というものを理解したようだった。
それからしばらくは、二人の喘ぎ声と荒い息遣いだけが室内に響いた。
最後、予想外に声が響き、誰かに聞かれてはいないかと奏は耳を澄ませたが、誰の足音も聞こえなかった。
奏は乱れた床を整えてから、疲れた様子の光に寝巻きをきちんと着せ直した。
後朝のほんのり上気した顔と額に張り付いた髪が艶めいて見える。
今まで誰も見たことがない、奏だけが見ることができる光の顔だった。
「……谷山」
光は恐る恐る奏の顔に触れた。奏がじっとしていると、細くて柔らかく、そして暖かい手が奏の顔をなぞりそっと頬を包んだ。
「もしお嫌でなければ、あなたのことを『奏』と呼んでも構わないでしょうか」
「もちろんです。嬉しいです!」
「……奏。私を抱いてくださって、ありがとうございました。あなたに抱かれたら、もしかしたら何かがわかるかもしれないと思いました」
光は改まって奏に頭を下げた。
昼間から情を交わしたあげく、畏まって頭を下げられると、さすがに恥ずかしい。
「お礼なんて言わないでください。……僕は光様のお役に立ったでしょうか」
「……はい、とても」
はにかむように淡く微笑む光は、誰よりも綺麗で、この優しく儚げな主を奏はこれからもずっと守りたいと思ったのだった。
自身の昂りが限界に近づいたのを感じた奏は、光の手を取り体の中で敏感なところ、触って欲しいと思うところに触らせた。触ってくれとは言ったものの、光は情事の際、おそらく自分から相手の体に触れたことがないのだということに気づいたからだ。だから奏自らが光の手を導いていく必要があった。
光の細い指で触れられながら息を荒げる奏を間近に感じ、光もようやく、一方的なものではない、互いの体と心が通い合う情事というものを理解したようだった。
それからしばらくは、二人の喘ぎ声と荒い息遣いだけが室内に響いた。
最後、予想外に声が響き、誰かに聞かれてはいないかと奏は耳を澄ませたが、誰の足音も聞こえなかった。
奏は乱れた床を整えてから、疲れた様子の光に寝巻きをきちんと着せ直した。
後朝のほんのり上気した顔と額に張り付いた髪が艶めいて見える。
今まで誰も見たことがない、奏だけが見ることができる光の顔だった。
「……谷山」
光は恐る恐る奏の顔に触れた。奏がじっとしていると、細くて柔らかく、そして暖かい手が奏の顔をなぞりそっと頬を包んだ。
「もしお嫌でなければ、あなたのことを『奏』と呼んでも構わないでしょうか」
「もちろんです。嬉しいです!」
「……奏。私を抱いてくださって、ありがとうございました。あなたに抱かれたら、もしかしたら何かがわかるかもしれないと思いました」
光は改まって奏に頭を下げた。
昼間から情を交わしたあげく、畏まって頭を下げられると、さすがに恥ずかしい。
「お礼なんて言わないでください。……僕は光様のお役に立ったでしょうか」
「……はい、とても」
はにかむように淡く微笑む光は、誰よりも綺麗で、この優しく儚げな主を奏はこれからもずっと守りたいと思ったのだった。