この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
忘れられし花
第10章 贈り物
 店主がオルゴールと置物を包んでいる間、馨は奏に訊ねた。

「谷山はあのオルゴールの曲を知っているか?」
「いいえ。西洋の曲なんですよね? 僕が知っているわけないじゃないですか。馨様はご存知なんですか?」

 だが馨の返答は、答えになっていなかった。

「……谷山。兄上は、過酷な運命から自由になりたいとお望みだろうか」

 忌み子として鷹取家には存在を否定され、不自由で虚弱な体は普通に生活することすらできない。光は自らを縛り付ける全ての物から解放されたいと、心の底では望んでいるのではないだろうか。

「そんなの当たり前じゃないですか! でも、馨様には光様の体を治すこともできませんし、光様を鷹取家から自由になんて絶対にしないんでしょう? 出来もしないことを言わないでください!」

 奏の激しい剣幕に気圧されるように、馨は沈黙した。沈黙せざるを得なかったのだ。

 馨はしばらく沈黙したのち、ようやく言葉を絞り出す。

「確かに、私には兄上を治すことも自由にすることもできない。今の質問は忘れろ。だが、全ては兄上のためだ!」

 全ては光を守るため。

 忌み子である光の存在が表沙汰にならないよう、存在を隠し通す。それが光を守る最善の方法であると、馨は信じていた。

「違います。光様のためじゃなくて、鷹取家のためでしょう? 光様は自分がいない方が鷹取家のためだって、自分は存在してはならない人間だって、二十年間ずっと思い続けてきたんです。僕はそんな光様を傍で支えたい。いつか光様が、自分は生きていていいんだと思えるときが来るように」
「それなら私は、どうすれば……」

 そのとき、店主が二つの包みを抱えて戻ってきた。

「お待たせしました、鷹取様」
「……失礼する」

 帰路につく馬車の中で、馨は自問自答を繰り返していた。

 どうすれば光を守れるのか。
 どうすれば光が幸せに暮らせるのか。
 そのために自分はどうするべきなのか。

 いくら考えても答えは出なかった。
/113ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ