この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
忘れられし花
第10章 贈り物
「今日はクリスマスイブですから、奏も一緒にいかがですか?」
光は隣に控えようとした奏の手を握った。先ほどよりだいぶ光の顔色はよくなっている。
奏は困った。奏は鷹取家の使用人なのだ。主人と食事を共にすることは好ましくない。助けを求めるように馨を見ると、馨は仕方がなさそうに頷いた。
「……わかりました。ご相伴させていただきます」
「ありがとうございます」
テーブルには鳥を一羽丸ごと焼いた巨大な焼き鳥をはじめ、様々な料理が並べられた。
奏は目の不自由な光が食べやすいように、説明しながら少しずつ料理を取り分けた。光は奏と馨の話を、にこにこしながら嬉しそうに聞いていた。
料理の最後には丸太を模した美しい洋菓子が出された。クリスマスケーキというらしい。
「申し訳ありませんが、全部は食べられそうにありません」
「気にしないでください。今日はたくさん食べましたからね。無理しないで光様が食べられるだけでいいんです」
「……はい」
光はケーキを一口だけ口にすると、食事を終えた。
「ご馳走様でした。どれも大変美味しかったです。それなのに残してしまい申し訳ありません……」
悲し気に頭を下げる光の手を、馨は握った。
「兄上が謝る必要はどこにもありません。私は兄上とクリスマスの晩餐ができて嬉しかったです」
「ありがとうございます。私もです。……奏」
光は奏に奥部屋から膝掛けを持ってきてくれるよう頼んだ。言われて初めて膝掛けを忘れていたことに気づいた奏は、慌てて部屋を出ていった。
光は隣に控えようとした奏の手を握った。先ほどよりだいぶ光の顔色はよくなっている。
奏は困った。奏は鷹取家の使用人なのだ。主人と食事を共にすることは好ましくない。助けを求めるように馨を見ると、馨は仕方がなさそうに頷いた。
「……わかりました。ご相伴させていただきます」
「ありがとうございます」
テーブルには鳥を一羽丸ごと焼いた巨大な焼き鳥をはじめ、様々な料理が並べられた。
奏は目の不自由な光が食べやすいように、説明しながら少しずつ料理を取り分けた。光は奏と馨の話を、にこにこしながら嬉しそうに聞いていた。
料理の最後には丸太を模した美しい洋菓子が出された。クリスマスケーキというらしい。
「申し訳ありませんが、全部は食べられそうにありません」
「気にしないでください。今日はたくさん食べましたからね。無理しないで光様が食べられるだけでいいんです」
「……はい」
光はケーキを一口だけ口にすると、食事を終えた。
「ご馳走様でした。どれも大変美味しかったです。それなのに残してしまい申し訳ありません……」
悲し気に頭を下げる光の手を、馨は握った。
「兄上が謝る必要はどこにもありません。私は兄上とクリスマスの晩餐ができて嬉しかったです」
「ありがとうございます。私もです。……奏」
光は奏に奥部屋から膝掛けを持ってきてくれるよう頼んだ。言われて初めて膝掛けを忘れていたことに気づいた奏は、慌てて部屋を出ていった。