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忘れられし花
第10章 贈り物
 奥部屋に戻った後、奏は光の手に隠しておいた小さな箱を乗せた。

「クリスマスには贈り物をするのだと、馨様に聞きました。これは僕からの贈り物です」
「ありがとうございます。とても可愛らしいうさぎですね」

 光は箱を開けて中の物を取り出し、手で触れて形を確かめた。
 うさぎの置物は手のひらにすっぽりとおさまるような小さな物だったが、光はとても喜んでくれた。

 続いて馨も、光に綺麗に包装された箱を手渡した。奏と同じ店で選んだ、あの小箱が包まれている。

「谷山に先を越されてしまいましたが、私からの贈り物はこの箱です」
「ありがとうございます」
「どうぞ蓋を開けてみてください」

 光が小箱の蓋を開けると、キラキラとした美しい音が零れ落ちた。蓋を閉じると、音も途切れる。

「これはオルゴールという、西洋のからくり小箱です」

 もう一度光が蓋を開けると、途切れた音が再び流れ出した。

「とても美しい曲ですね」

 光はオルゴールの奏でる旋律に、じっと耳を傾けている。

「西洋の歌曲です」

 馨は目を閉じると、息を整え歌い出した。

 Lascia ch'io pianga mia cruda sorte.
 E che sospiri la liberta.

 馨の透明な声で歌われる歌は、涙がこぼれそうなくらい美しいと、奏は思った。詞の意味はわからないが、心を揺さぶられるような歌だった。

 すると、馨に続いて光が歌い出した。
 優しい光らしい、柔らかい歌声。

 Lascia ch'io pianga mia cruda sorte.
 E che sospiri la liberta.

「兄上はこの曲をご存知でいらしたのですか?」
「……いいえ」

 馨は驚いて光を見つめた。馨がただ一度歌っただけで、外国の言葉で完璧に歌ってみせた光。記憶力の良さ、耳の良さに舌を巻く思いだ。これだけの能力を秘めながら、無為に日々を過ごさせるしかないとは、なんとも口惜しい。
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