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忘れられし花
第10章 贈り物
「申し訳ありませんが、一番上の棚を開けていただけませんか?」
オルゴールを抱いていた光は、柔らかい口調で奏に頼んだ。
「一番上ですか?」
「はい。お願いします」
奏は棚を見上げた。一番上の棚は奏の背丈では踏み台がないと手が届かない位置にある。そのため奏は一番上の棚を全く使っていなかった。
「中に紙袋が入っていると思いますので、こちらへいただけますか?」
踏み台を使い、中を覗き込むと、確かに二つの見覚えのない紙袋があった。一体誰がこのような場所に紙袋を置いたのだろう。奏は首を捻りつつも、紙袋を光に手渡した。
光は袋を手で確かめてから、奏と馨に一つずつその袋を手渡した。
「私からの贈り物です」
「えっ、僕たちにですか?」
二人は驚きつつ袋を開けた。
袋の中には綺麗な千代紙で折られた折り鶴が、それぞれ入っていた。
ただし、普通の折り鶴と違い、複数の鶴が何羽も連なっているものだ。
「これは連鶴という。切れ目を入れた一枚の紙から折るものだ」
馨がこうしたものに詳しくない奏に教えてくれた。奏の袋に入っていた、八羽の鶴が円形に連なっているものが「八ツ橋」、馨の方の、九羽の鶴が群れ飛ぶ姿のものが「青海波」というらしい。連鶴はどちらも見事な出来映えで、しかも一折一折、非常に丁寧に折られていた。
「これ、一枚の紙なんですか? もしかして光様が折ったんですか?」
「はい。お二人には素晴らしい品をいただいたのに、私はこの程度のものしか差し上げることができず、申し訳ありません」
光は、白い顔に悲しそな表情を浮かべ、奏と馨に向かって頭を下げた。
オルゴールを抱いていた光は、柔らかい口調で奏に頼んだ。
「一番上ですか?」
「はい。お願いします」
奏は棚を見上げた。一番上の棚は奏の背丈では踏み台がないと手が届かない位置にある。そのため奏は一番上の棚を全く使っていなかった。
「中に紙袋が入っていると思いますので、こちらへいただけますか?」
踏み台を使い、中を覗き込むと、確かに二つの見覚えのない紙袋があった。一体誰がこのような場所に紙袋を置いたのだろう。奏は首を捻りつつも、紙袋を光に手渡した。
光は袋を手で確かめてから、奏と馨に一つずつその袋を手渡した。
「私からの贈り物です」
「えっ、僕たちにですか?」
二人は驚きつつ袋を開けた。
袋の中には綺麗な千代紙で折られた折り鶴が、それぞれ入っていた。
ただし、普通の折り鶴と違い、複数の鶴が何羽も連なっているものだ。
「これは連鶴という。切れ目を入れた一枚の紙から折るものだ」
馨がこうしたものに詳しくない奏に教えてくれた。奏の袋に入っていた、八羽の鶴が円形に連なっているものが「八ツ橋」、馨の方の、九羽の鶴が群れ飛ぶ姿のものが「青海波」というらしい。連鶴はどちらも見事な出来映えで、しかも一折一折、非常に丁寧に折られていた。
「これ、一枚の紙なんですか? もしかして光様が折ったんですか?」
「はい。お二人には素晴らしい品をいただいたのに、私はこの程度のものしか差し上げることができず、申し訳ありません」
光は、白い顔に悲しそな表情を浮かべ、奏と馨に向かって頭を下げた。