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忘れられし花
第11章 誘拐
馨を本館まで送り届けた奏は、急いで離れに戻った。結局井上とは本館まで会えず、戻るのが遅くなってしまった。
「戻りました、光様」
声をかけ、襖を開けるが、光の姿がどこにも見えない。
「……光様? 光様!」
奏は襖を開け放ち、離れ中を探し回った。念のため庭にも降りてみたが、白く積もった雪の上には何の痕跡もなかった。
「誰かが光様を……!」
生まれつき足が不自由な光は、一人では立つことすらできない。光が自力で離れを出ていくことは考えられず、何者かに連れ去られたと考えるのが妥当だろう。
きちんと整えられた布団に手を入れると、中はほんの少しではあるが、まだ温もりが残っていた。おそらく奏が離れを出てすぐ、光は誰かに連れ去られたに違いない。
奏は離れを飛び出し、雪の中を本館まで全力で駆け抜けた。跳ね上げたみぞれ状の雪で足元は濡れ、その冷たさに指の感覚がなくなっていたが、気にする余裕など奏にはない。
焦りと不安で奏の心は一杯だった。
「戻りました、光様」
声をかけ、襖を開けるが、光の姿がどこにも見えない。
「……光様? 光様!」
奏は襖を開け放ち、離れ中を探し回った。念のため庭にも降りてみたが、白く積もった雪の上には何の痕跡もなかった。
「誰かが光様を……!」
生まれつき足が不自由な光は、一人では立つことすらできない。光が自力で離れを出ていくことは考えられず、何者かに連れ去られたと考えるのが妥当だろう。
きちんと整えられた布団に手を入れると、中はほんの少しではあるが、まだ温もりが残っていた。おそらく奏が離れを出てすぐ、光は誰かに連れ去られたに違いない。
奏は離れを飛び出し、雪の中を本館まで全力で駆け抜けた。跳ね上げたみぞれ状の雪で足元は濡れ、その冷たさに指の感覚がなくなっていたが、気にする余裕など奏にはない。
焦りと不安で奏の心は一杯だった。