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忘れられし花
第11章 誘拐
 本館に着くと、執事の井上が奏を迎えた。

「どうかなさいましたか?」
「光様が……! 光様が離れからいなくなったんです!」

 奏から詳しい状況を聞き、井上は頷いた。

「わかりました。ですが今こちらにできることはなさそうです。一旦離れに戻ってお休みください。明朝、離れに伺います」
「光様が連れ去られたんですよ! 急がないと光様が……!」
「どうか落ち着いてください。相手は何らかの目的があって光様を連れ去ったのでしょう。ならばじきに何かしらの要求が相手側からあるはずです。そして光様はそのための人質にされたのだと思われます。生かしておかないと人質の意味がないので、光様はご無事です」

 筋道の通った井上の説明に、奏はがっくりと肩を落とした。おそらく無事だろうという予測には安堵したが、どこかに連れ去られたことには変わりがない。

「ですが、光様はお体が弱いんです! もし光様に何かあったりしたら……!」

 光の布団の横には、羽織と足袋がきちんと畳まれたまま残されていた。雪の降る厳寒の夜に、光は寝巻きに素足のまま連れ出されたのだ。心配でない訳がない。

 奏のいないどこかで、高熱を出してはいないだろうか。咳の発作を起こしてはいないだろうか。ひどい仕打ちを受けたりしてはいないだろうか。
 無事に光を取り戻すまで、奏の心が休まることはないだろう。

 奏は本館を出て離れに戻った。膝を抱えて厚い雲に覆われた夜空を見上げる。いつのまにか雪は止んでいた。

 主を失った布団の枕元にひっそりと残された、小さなうさぎの置物とオルゴールが悲しかった。
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