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忘れられし花
第11章 誘拐
「碧眼か」

 西洋人ならば貴雅も見たことは何度かあるが、この国の人間で碧眼というのは初めて見る。

「はい。おそらく目も見えないはずです。不自由な足や虚弱な質と併せて考えますと、鷹取家の『忌み子』でございましょう」

 ――忌み子。

 親子や兄弟など、禁忌の交わりにて、生まれた子供をいう。
 名家では血の濃さを保つために、親類同士で婚姻することは珍しくないが、親子や兄弟などの近すぎる血の交わりは、当然禁忌とされている。鷹取家が青年の存在を世間から隠さねばならぬ理由に、貴雅は合点が行った。
 だが、そうすると一体誰の子かという問題が出てくる。

 貴雅はぐったりと横たわる青年の体を起こした。腕にもたせかけた華奢な体は、熱のせいでひどく熱い。
 起こした拍子に寝巻きがするりと肩から落ち、ため息をついて着せ直した。寝巻きを着せたのは、高坂に違いない。高坂は腕のいい医者兼秘書だが、日常生活に関してはどうにも不器用な面がある。

 露になった白磁のような肌に、いくつもの虐待を受けたような傷が見え、貴雅は眉を潜めた。こんなことをするのは、鷹取の爺だろうか。

「解熱剤はあるか」
「こちらに」
「貸せ」

 貴雅は高坂の手から、解熱剤の小瓶を抜き取った。西洋から学んだ、非常に強い解熱剤だ。

「熱が下がらなければ死ぬのだろう。大事な人質を死なせるわけにはいかん」

 抱えた青年の細い顎を持ち上げて上向かせ、口移しで強引に解熱剤を飲ませた。高坂にやらせてもいいのだが、不器用な高坂のことだ。うまく飲ませられずに、双方がむせるのがオチだ。貴雅は重ねていた唇を離すと、白く細い喉が動くのを眺めた。

「意識を取り戻したら呼べ」
「かしこまりました」

 室内に高坂を残し、貴雅は自室へと戻った。
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