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忘れられし花
第1章 序
「いいえ。決めました。僕はここに残ります。だって僕が出て行ったら、毎回お方様がクソジジイの伽をさせられるんでしょう? それじゃあお方様が可哀想すぎます。僕なら大丈夫。ああいうお客もたまにいましたから、何とでもなります。男娼としての経験も、たまには役に立つことがあるんですね」
奏がにこり笑うと松永は大きく息をつき、固く目を閉じた。
「そうか。……感謝する。ならば手伝ってくれ。お渡りのあと、お方様は高熱を出されるのがいつものことゆえ」
当主の去った部屋には、まるで遊びに飽きた子供が玩具を放り出すかのように、気を失ったお方様が全裸のまま無造作に放置されていた。お方様の全身には殴打の痕と、明らかな凌辱の痕跡。お方様は奏を庇ってこのような辱しめを受けたのだ。奏はあのときお方様を行かせてしまったことを激しく後悔した。
奏と松永はお方様を寝室へ運び丁寧に体を清めたあと、一つ一つ傷の手当てをした。お方様の体には今回杖で打たれた以外にもいくつもの古い傷跡があり、このようなことが幾度も繰り返されてきたことが、傷跡からもうかがえた。
松永の言う通り、お方様はその後発熱した。高熱でうなされるお方様を見つめながら、松永がお方様について教えてくれた。
お方様は、当主が自分の娘に産ませた忌み子であること。
血の濃さ故に生まれつき目と足が不自由で、しかも非常に虚弱であること。
忌み子であるが故に名前すら与えられず、生まれてから二十年間、離れに隔離され続けていること。
けれど、不幸な生い立ちにもかかわらず、気高く優しい方であること。
告げられた余りにも辛く厳しい生い立ちに、奏は思わず涙した。
奏がにこり笑うと松永は大きく息をつき、固く目を閉じた。
「そうか。……感謝する。ならば手伝ってくれ。お渡りのあと、お方様は高熱を出されるのがいつものことゆえ」
当主の去った部屋には、まるで遊びに飽きた子供が玩具を放り出すかのように、気を失ったお方様が全裸のまま無造作に放置されていた。お方様の全身には殴打の痕と、明らかな凌辱の痕跡。お方様は奏を庇ってこのような辱しめを受けたのだ。奏はあのときお方様を行かせてしまったことを激しく後悔した。
奏と松永はお方様を寝室へ運び丁寧に体を清めたあと、一つ一つ傷の手当てをした。お方様の体には今回杖で打たれた以外にもいくつもの古い傷跡があり、このようなことが幾度も繰り返されてきたことが、傷跡からもうかがえた。
松永の言う通り、お方様はその後発熱した。高熱でうなされるお方様を見つめながら、松永がお方様について教えてくれた。
お方様は、当主が自分の娘に産ませた忌み子であること。
血の濃さ故に生まれつき目と足が不自由で、しかも非常に虚弱であること。
忌み子であるが故に名前すら与えられず、生まれてから二十年間、離れに隔離され続けていること。
けれど、不幸な生い立ちにもかかわらず、気高く優しい方であること。
告げられた余りにも辛く厳しい生い立ちに、奏は思わず涙した。