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忘れられし花
第1章 序
「あのクソジジイは、いつもお方様にあんなことをしているんですか?」
「そうだ。当主様はお方様のご容姿に執着されておられる」
松永は目を伏せ、深く息をついた。
「若いお前がくれば、一時的であれ当主様の目がお方様ではなくお前に向く。そうすればお方様が伽をせずに済むと私は思った。男娼のお前を身請けして傍仕えにしたのも、男娼ならば見ず知らずの人間との閨事にも慣れているだろうと思ったからだ。だが、お方様はお前を辛い目に遭わせるより、ご自分が辛い思いをする方を選ばれた」
松永が男娼だった奏をわざわざ身請けしてまで傍仕えにした理由が、ようやく奏にも飲み込めた。
今まで若い使用人を入れなかったのも、それらの者が当主に目をつけられるのをお方様は危惧していたのだろう。目をつけられたが最後、どのような目に遭わされるかわからない。
そして当主に目をつけられた奏のために、お方様は自分の身を当主に差し出した。
あんなに華奢で、触ったら壊れてしまいそうなくらい儚げに見えるのに、お方様はとても強い心の持ち主だった。
奏はこの強くて優しい心を持つお方様を、二度とこのような目に遭わせはしないと、固く心に誓った。
「そうだ。当主様はお方様のご容姿に執着されておられる」
松永は目を伏せ、深く息をついた。
「若いお前がくれば、一時的であれ当主様の目がお方様ではなくお前に向く。そうすればお方様が伽をせずに済むと私は思った。男娼のお前を身請けして傍仕えにしたのも、男娼ならば見ず知らずの人間との閨事にも慣れているだろうと思ったからだ。だが、お方様はお前を辛い目に遭わせるより、ご自分が辛い思いをする方を選ばれた」
松永が男娼だった奏をわざわざ身請けしてまで傍仕えにした理由が、ようやく奏にも飲み込めた。
今まで若い使用人を入れなかったのも、それらの者が当主に目をつけられるのをお方様は危惧していたのだろう。目をつけられたが最後、どのような目に遭わされるかわからない。
そして当主に目をつけられた奏のために、お方様は自分の身を当主に差し出した。
あんなに華奢で、触ったら壊れてしまいそうなくらい儚げに見えるのに、お方様はとても強い心の持ち主だった。
奏はこの強くて優しい心を持つお方様を、二度とこのような目に遭わせはしないと、固く心に誓った。