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忘れられし花
第13章 鷹取に咲くべき花
「お二人は仲のいいご兄弟なのですね」
「お分かりになりますか! さすが光様ですね。母親こそ違いますが、兄は僕たち兄妹や継母である母上のことをとても大切にしてくださいます。兄は僕の誇りなんです。光様には、ご兄弟はいらっしゃいますか?」
「弟が一人おります」
「ああ、やっぱり! きっとお優しい兄上様でいらっしゃるんでしょうね。僕は」
「そこまでにしておけ。体調が優れないと、高坂から聞いているのだろう?」

 貴晴は雪のように白い光の手に目を落とした。握ったままの光の両手は、明らかに異常な熱を帯びていた。

「大丈夫です」

 光は優しく微笑んだが、白い顔には疲労のようなものが見える。貴晴はそっと光の手を離した。

「失礼しました、光様。では、私はこれで兄上を連れて一緒に帰ります。光様はお熱があるのですから、もちろん兄上だってお帰りになるんですよね? 兄上だけ光様の傍に残るなんてずるいですから。高坂。兄上が戻って来ても、部屋の中に入れてはダメだからな」

 貴晴は貴雅を引きずるようにして、客間を出ていった。

 あとに残された高坂の疲れたようなため息を聞き、光はもう一度くすりと笑った。
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