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忘れられし花
第14章 親族会議
 光が離れから姿を消して四日後、鷹取家に一通の書状が届けられた。

 差出人は「鷲尾貴雅」。
 書状には刃物で切り取られたとおぼしき髪が一房、添えられていた。

 馨は顔色を変えた。淡い栗色のその髪は、光の髪に間違いない。明るい色の髪は鷹取家の特徴だが、馨の知る限り、光以外には鷹取家にもそのような淡い栗色の髪の持ち主はいなかった。

「谷山を呼べ」

 奏は書状に添えられた髪を見て息を飲んだ。

「これは光様の髪じゃないですか! 光様はご無事なんですか?」
「無事だ」

 届いた書状を手渡すと、奏は素早く目を通した。

「光様っ! ……馨様、鷲尾家というのは、一体何なんですか?」

 馨は奏に、鷹取家と鷲尾家の関係を説明した。

「昔から両家は、事あるごとに対立してきた家柄だ。宿敵とでも言えばいいのか。鷹取家も鷲尾家に随分酷いことをしてきたから、今回の件も、実は全くあり得ないことではない。鷲尾家は最近、家勢が傾きつつあった。鷹取家に対して強行手段に出るのは、ある意味無理もないことだ」

 いつもの感情豊かな馨はすっかり鳴りを潜め、異常とも思えるほど、馨は淡々としていた。

「ちょっと馨様? 納得なんかしないでください! 光様が攫われたんですよ? どうしてそんなに落ち着いていられるんですか!」

 奏は馨の肩に手をかけ、ガクガクと揺さぶった。

「わかっている。私だって兄上が心配なのは同じだ」

 馨は奏の手を振り払った。

「だが、これは単なる誘拐ではない。兄上の解放条件に鉱山開発が絡む以上、一度親族会議に諮らなくては、鷹取家当主たる私は動けないんだ!」

 馨は辛そうだった。あんなに光に懐いているのだ。馨だって今すぐ光を助けに行きたいのは、奏と同じだろう。

「待っていろ。必ず親族会議で兄上の解放を認めさせてみせる。認めなかったら当主権限を使ってでも、兄上は必ずお助けする」
「わかりました。馨様が上手く説得できなかったら、僕だけでも鷲尾家に乗り込みますからね?」
「大丈夫だ。そのときは私もお前と一緒に鷲尾に乗り込んでやる」

 馨の言葉に、奏も渋々頷いた。
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