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忘れられし花
第14章 親族会議
 馨は翌日、鷹取一族の主だった者たちを集め、親族会議を開いた。

 鷲尾からの書状を読み上げると、一斉に場がざわついた。
 そもそも書状に出てきた「鷹取光」とは一体誰なのか。家系図にはそのような名はなく、馨の他には誰一人光を知るものはいなかった。

「『鷹取光』とは私の異父兄だ。この屋敷の離れに、ひっそりとお暮らしになっている」

 再び場はざわついた。

 一族の間に噂だけはまことしやかに流れていた「鷹取家の忌み子」。これまで前当主を憚り、誰もその真偽を確かめようとはしなかった。異父兄という馨の言葉からすると、前当主鷹取克久と娘華子との禁忌の交わりで生まれた子だろう。

 鷹取家の忌み子は本当に存在していたのだ。

「ふん、鷲尾か。このようなくだらない書状は、無視するのが当然だ」

 前当主の従兄弟にあたる老人が発言した。周囲にも、老人に賛同する空気が流れている。

「兄上を見捨てろと申されますか!」

 馨もある程度予想はしていたが、実際に発言されると、ふつふつと怒りが込み上げてくる。

「鷹取家のためなれば、多少の犠牲は致し方のないこと」

 壮年の男が老人に加勢した。この男も、さも当たり前であるかのように、光を見捨てろと言う。馨は内心の激しい怒りを隠して、努めて冷静に男に対峙した。

「お言葉ですが、あなたの妻や子供がさらわれても、致し方ないと言えますか?」
「それとこれとはまた別の話。関係のない話をこの場に持ち出さないでいただけますかな? いくら先代当主の血を引くとはいえ、所詮忌み子ではありませぬか。元々忌み子など鷹取家には存在してはならぬのです。ここで死んでくれた方が鷹取家のため。こうなった以上、忌み子も死ぬ覚悟でおりましょう」

 妻子を引き合いに出してはみたものの、経験の少ない馨の浅知恵は、あっさりと男に論破されてしまった。光を虫けら同然に蔑む男を馨は睨み付けるが、これも全く効果はない。男は涼しい顔のままだ。

 一癖も二癖もある者ばかりの鷹取家親族会議を思うがままに操るのは、幼い馨には荷が勝ちすぎた。
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