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忘れられし花
第14章 親族会議
 光がいつでも死ぬ覚悟をしているのは、馨も知っている。だが忌み子というだけで「死んでくれ」と願うなど、あっていいはずがない。
 光も馨と同じ人間なのだ。

「人の命以上に大切なものなんて、一体何があるというんですか!」

 だが、馨の心からの叫びは、鼻で笑われた。

「忌み子など、人以下の価値しかない。我らと一緒にしないでいただこう」

 これが光という忌み子を生んだ、鷹取一族の本性なのだと、馨は悟った。

「訊いた私が愚かでした。この件は当主権限で、私の好きなようにさせてもらいます。兄上をお救いするためなら鉱山の一つや二つ、鷲尾にくれてやります。鷹取家の屋台骨はその程度で揺らぐことはありません」
「横暴ですぞ!」
「横暴で結構。鷹取家当主はあなたではなくこの馨です。これ以上御託を並べるとおっしゃるなら、当主への反逆とみなし、それなりの対応をいたしますが、それでもよろしいか」
「くっ……!」

 一族の者たちは黙り込んだ。
 鷹取家当主への反逆に対する制裁は、熾烈をきわめる。それによって曲者揃いの一族の統制は、長い間曲がりなりにも保たれてきたのだ。
 どうあっても光を見捨てると言うのなら、馨も制裁を躊躇するつもりは全くなかった。
 その力が、今の馨にはあった。

「私は兄上に誓いました。兄上の存在が鷹取家の罪の証だというのなら、兄上ごとその罪を背負って見せましょうと。それが鷹取家当主としての義務であると」
「後悔しても知らんぞ!」

 最後に老人が吠えた。

「後悔などするはずありません」

 馨は立ち上がり、親族会議会議は打ち切られた。

 親族が全て部屋を出て行った後、馨は一人、深く椅子に沈み込んだ。

 馨は一族を説得できず、結局当主権限を使う羽目になってしまった。そして光の存在が明かされた以上、今後一族の誰かが光の命を狙うやも知れず、無事に光を救い出したとしても、一族の動向に今まで以上の注意を払う必要が出てきた。

「兄上……。私に兄上をお守りする力をください」

 馨は祈るように呟くと、勢いをつけて椅子から立ち上がった。鷹取家当主として、やるべきことはたくさんあった。
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