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忘れられし花
第14章 親族会議
「馨様、どうでした?」
馨が部屋を出ると、扉の傍で奏が待ち構えていた。勢い込んで馨に事の首尾を訊ねる。
「どうもこうもない。鷹取家の一族が根から腐っているのがわかっただけだ。結局、当主権限を使わざるを得なかった」
馨は早足で歩き出した。奏が慌てて後を追う。一族を一刀両断しているわりにその口調は寂しげで、いつもの力が感じられない。
「私は今まで鷹取家の何を見てきたのだろうか。兄上のことも、両親やお祖父様のことも、一族のことも。私は物事の表面だけしか見ていなかった」
「よかったじゃないですか。後になって知るより、今知ったんですから、これから馨様が一族を変えていけばいいんです」
「簡単に言ってくれるな」
馨はため息をついた。「言うは易く行うは難し」まさに諺通りだ。
「それにしても取引が一月四日だなんて、なんだか相手は随分と悠長ですね」
鷲尾家は、何故取引までこんなに日数を開けるのだろうか。普通、取引は早ければ早い方がいいと思うのだが。
「正月三ヶ日は、鷲尾も鷹取も忙しくてそれどころではないからだろう。鷹取は喪中でいつもよりは静かな正月だが、それでも忙しいことには変わりがない」
「あー、正月……」
光のことで頭が一杯で、奏は正月のことなどすっかり忘れていた。
たとえ喪中であっても正月だ。新たな鷹取家当主である馨に、新年の挨拶に訪れる客も多いだろう。無意味にうろついても馨の邪魔になるだけだ。取引当日までは離れで大人しくしていた方が良さそうだった。
馨が部屋を出ると、扉の傍で奏が待ち構えていた。勢い込んで馨に事の首尾を訊ねる。
「どうもこうもない。鷹取家の一族が根から腐っているのがわかっただけだ。結局、当主権限を使わざるを得なかった」
馨は早足で歩き出した。奏が慌てて後を追う。一族を一刀両断しているわりにその口調は寂しげで、いつもの力が感じられない。
「私は今まで鷹取家の何を見てきたのだろうか。兄上のことも、両親やお祖父様のことも、一族のことも。私は物事の表面だけしか見ていなかった」
「よかったじゃないですか。後になって知るより、今知ったんですから、これから馨様が一族を変えていけばいいんです」
「簡単に言ってくれるな」
馨はため息をついた。「言うは易く行うは難し」まさに諺通りだ。
「それにしても取引が一月四日だなんて、なんだか相手は随分と悠長ですね」
鷲尾家は、何故取引までこんなに日数を開けるのだろうか。普通、取引は早ければ早い方がいいと思うのだが。
「正月三ヶ日は、鷲尾も鷹取も忙しくてそれどころではないからだろう。鷹取は喪中でいつもよりは静かな正月だが、それでも忙しいことには変わりがない」
「あー、正月……」
光のことで頭が一杯で、奏は正月のことなどすっかり忘れていた。
たとえ喪中であっても正月だ。新たな鷹取家当主である馨に、新年の挨拶に訪れる客も多いだろう。無意味にうろついても馨の邪魔になるだけだ。取引当日までは離れで大人しくしていた方が良さそうだった。