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忘れられし花
第15章 友達
 正月を迎え、皆それぞれ一つ、歳を重ねた。
 馨は十三歳、奏は十六歳、光は二十一歳に。

「谷山は十六歳になったのか?」

 正月三日、離れを訪れた馨は珍しく和装だった。光と似通った顔立ちの馨が和装をすると光のことが思い出され、今の奏には少々辛い。それにしても光のいない離れに、馨は一体何の用があるというのだろう。

「はい。数え歳では十六歳になりました。誕生日は春なので、満で言うとまだ十五歳ですが」
「そうか」
「僕の年齢が何か?」

 馨は腕を組み、何やら難しい顔をして考え込んでいる。

「谷山。兄上の正式な『男妾』になる気はないか?」

 馨の言う男妾とは、一般的な「お妾さん」とは異なり、妻に準ずる者として、正式に夫の家の戸籍に入る制度のことだろう。
 正式な妾には男妾と女妾があり、どちらも妻同様夫の姓を名乗ることになる。男性は夫に妻として娶うことは不可能だが、男妾としてならばそれが可能だ。
 妾になることができる年齢は満十六歳。奏ならば、春の誕生日を迎えれば妾になることが可能だった。

 奏は突然の馨の発言に驚き、愛敬のある丸い目をさらに丸くして馨を見つめた。

「でも、光様の戸籍は……」

 存在しない者とされてきた光に、当然戸籍はない。戸籍のない光の正式な男妾になど、なれるはずもない。
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