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忘れられし花
第15章 友達
「脈は少し弱いですが、特に異常はありません」
「ああ、よかった。これで取引まであと少し、安心して光様とお話しができますね。……何か僕にできることはありませんか?」
高坂の言葉に、当の光ではなく貴晴が安堵の息をついた。心底嬉しそうな貴晴に、高坂も何も言わず引き下がる。
「では一つだけ、お願いをしてもよろしいでしょうか」
「僕にできることなら喜んで!」
光は貴晴のいる方向に顔を向けた。とたんに貴晴が顔を輝かせる。
「少しの間だけで構いません。私と友達になっていただけないでしょうか。罪深い忌み子の身で厚かましいお願いだとはわかっておりますが、どうか……」
控え目に告げられた光の願い事は、意外なものだった。
深く頭を下げ消え入りそうな風情の光の両手を貴晴は強く握り、人形のように綺麗な顔を覗き込んだ。
「もちろんです、光様。大変光栄です! でも僕は光様より随分と年下ですが、僕でよろしいんですか? 僕の方は光様のような綺麗でお優しい方とお友達になれてとても嬉しいです。光様が忌み子だとかそんなことは、僕にとってはどうでもいいことです。そうだ! どうせなら兄上と高坂にも友達になってもらいましょう。光様とは僕より年が近いですし、友達は多い方が楽しいですから。二人ともまさか嫌とは言わないですよね?」
貴晴はくるりと向き直り、貴雅と高坂を睨みつけた。
「私は構いません」
「いいだろう。嫌だと言ったら永遠にお前に罵られそうだからな」
「当然です」
満足げにうなずいた貴晴は、再び光の手を取った。白磁のようになめらかな手。
「光様! これで友達が三人できました! 僕と兄上と高坂の三人です。もし僕たちだけで足りないのであれば他にも連れてきますから、仰ってください」
「……はい。ありがとうございます」
光はふわりと微笑んだ。滲むような美しい微笑みの意味を鷲尾家の三人が知るのは、少し後のことになる。
「ああ、よかった。これで取引まであと少し、安心して光様とお話しができますね。……何か僕にできることはありませんか?」
高坂の言葉に、当の光ではなく貴晴が安堵の息をついた。心底嬉しそうな貴晴に、高坂も何も言わず引き下がる。
「では一つだけ、お願いをしてもよろしいでしょうか」
「僕にできることなら喜んで!」
光は貴晴のいる方向に顔を向けた。とたんに貴晴が顔を輝かせる。
「少しの間だけで構いません。私と友達になっていただけないでしょうか。罪深い忌み子の身で厚かましいお願いだとはわかっておりますが、どうか……」
控え目に告げられた光の願い事は、意外なものだった。
深く頭を下げ消え入りそうな風情の光の両手を貴晴は強く握り、人形のように綺麗な顔を覗き込んだ。
「もちろんです、光様。大変光栄です! でも僕は光様より随分と年下ですが、僕でよろしいんですか? 僕の方は光様のような綺麗でお優しい方とお友達になれてとても嬉しいです。光様が忌み子だとかそんなことは、僕にとってはどうでもいいことです。そうだ! どうせなら兄上と高坂にも友達になってもらいましょう。光様とは僕より年が近いですし、友達は多い方が楽しいですから。二人ともまさか嫌とは言わないですよね?」
貴晴はくるりと向き直り、貴雅と高坂を睨みつけた。
「私は構いません」
「いいだろう。嫌だと言ったら永遠にお前に罵られそうだからな」
「当然です」
満足げにうなずいた貴晴は、再び光の手を取った。白磁のようになめらかな手。
「光様! これで友達が三人できました! 僕と兄上と高坂の三人です。もし僕たちだけで足りないのであれば他にも連れてきますから、仰ってください」
「……はい。ありがとうございます」
光はふわりと微笑んだ。滲むような美しい微笑みの意味を鷲尾家の三人が知るのは、少し後のことになる。