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忘れられし花
第15章 友達
「では光様。早速ですが朝餉をご一緒にいかがですか? 今用意をさせますので、少しだけお待ちください。高坂も一緒に食べるんだからな?」
「私もですか? わかりました」
ややあって四人分の朝餉が運ばれてきた。二間続きのこの客間は、手前が居間、奥が寝室となっている。高坂が光を抱え、寝室から食事の用意が整った居間へと移動させた。光の足が不自由なことを知らなかった貴晴が痛ましそうな顔になる。
鷲尾家の朝餉は洋食が多い。だが、体調の優れない光には、消化が良く滋養のある卵粥を出すよう、いいつけてあった。光に匙を手渡した貴晴は、光が匙の柄を返したのを見て、あっ、という顔をした。
「光様は左利きでいらっしゃるんですね。今まで気づきませんでした。匙を反対向きに渡してしまい申し訳ありません。粥はお口に合いますでしょうか」
「大変美味しゅうございます。貴晴様は何も悪くありません。事前に申し上げなかった私が悪いのです」
矢継ぎ早に光と会話をするのは、主に貴晴だ。手と口が同時に忙しく動いていて思わず感心してしまうほどだ。普段なら食事中の無駄口は注意するところだが、今日ばかりは大目にみることにした。
ふと手を止めた光は、静かに匙を置いた。貴晴がすぐに光の様子に気づき、声をかけた。
「どうかなさいましたか、光様? 何か不都合でも? もしかしてお体の具合がお悪いとか……」
「いいえ、そうではありません。私はこのような不具の身です。友達になっていただいても、私には皆様にできるようなことが何もありません……」
俯く光の手を、今度は貴雅が握った。子供の手ではない、大人の男性の手を感じ、光は顔を上げ、貴雅に顔を向けた。
「私もですか? わかりました」
ややあって四人分の朝餉が運ばれてきた。二間続きのこの客間は、手前が居間、奥が寝室となっている。高坂が光を抱え、寝室から食事の用意が整った居間へと移動させた。光の足が不自由なことを知らなかった貴晴が痛ましそうな顔になる。
鷲尾家の朝餉は洋食が多い。だが、体調の優れない光には、消化が良く滋養のある卵粥を出すよう、いいつけてあった。光に匙を手渡した貴晴は、光が匙の柄を返したのを見て、あっ、という顔をした。
「光様は左利きでいらっしゃるんですね。今まで気づきませんでした。匙を反対向きに渡してしまい申し訳ありません。粥はお口に合いますでしょうか」
「大変美味しゅうございます。貴晴様は何も悪くありません。事前に申し上げなかった私が悪いのです」
矢継ぎ早に光と会話をするのは、主に貴晴だ。手と口が同時に忙しく動いていて思わず感心してしまうほどだ。普段なら食事中の無駄口は注意するところだが、今日ばかりは大目にみることにした。
ふと手を止めた光は、静かに匙を置いた。貴晴がすぐに光の様子に気づき、声をかけた。
「どうかなさいましたか、光様? 何か不都合でも? もしかしてお体の具合がお悪いとか……」
「いいえ、そうではありません。私はこのような不具の身です。友達になっていただいても、私には皆様にできるようなことが何もありません……」
俯く光の手を、今度は貴雅が握った。子供の手ではない、大人の男性の手を感じ、光は顔を上げ、貴雅に顔を向けた。