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忘れられし花
第15章 友達
「貴晴も高坂も、お前の体のことなど気にしないだろう。もちろん私もだ。そもそも友達というものは損得勘定で作るものではない。それを言うならお前にも私と友達になったところで得ることは何もないだろう」
「いいえ。私と友達になっていただけた、そのことが嬉しいのです。私はずっと、話に聞く友達というものに憧れておりました。ですが、鷹取家から出ることのできない私には友達などできるはずがないと……。今はまるで夢の中にいるようです」
苦しみに満ちた運命の中で、光が夢見たものは「友達」だった。普通の人間には何ということはない、ごく当たり前の存在。けれど、生まれてから二十年、鷹取家の離れで人目を避けて暮らしてきた光に使用人以外の他人と知り合う機会など存在しなかった。鷲尾兄弟と高坂は、光が初めて知り合った他人なのだ。
「あの、失礼なことをお聞きしますが、もしかして光様は、今まで鷹取家からお出になったことがなかったのですか?」
「はい、今回生まれて初めて鷹取家の外へ出ました。もしこうして攫われなければ、私が外へ出ることはなかったでしょう」
「そんな! それってまるで監禁ではないですか! そんなのあんまりです!」
光が数奇な運命の下に生まれたことは、貴晴も聞いていた。しかし、生涯を監禁されて暮らさねばならない程、光が何か悪い事をしたとは貴晴には思えなかった。
「それが私に課せられた運命なのです。運命には従わなければなりません」
「いいえ。私と友達になっていただけた、そのことが嬉しいのです。私はずっと、話に聞く友達というものに憧れておりました。ですが、鷹取家から出ることのできない私には友達などできるはずがないと……。今はまるで夢の中にいるようです」
苦しみに満ちた運命の中で、光が夢見たものは「友達」だった。普通の人間には何ということはない、ごく当たり前の存在。けれど、生まれてから二十年、鷹取家の離れで人目を避けて暮らしてきた光に使用人以外の他人と知り合う機会など存在しなかった。鷲尾兄弟と高坂は、光が初めて知り合った他人なのだ。
「あの、失礼なことをお聞きしますが、もしかして光様は、今まで鷹取家からお出になったことがなかったのですか?」
「はい、今回生まれて初めて鷹取家の外へ出ました。もしこうして攫われなければ、私が外へ出ることはなかったでしょう」
「そんな! それってまるで監禁ではないですか! そんなのあんまりです!」
光が数奇な運命の下に生まれたことは、貴晴も聞いていた。しかし、生涯を監禁されて暮らさねばならない程、光が何か悪い事をしたとは貴晴には思えなかった。
「それが私に課せられた運命なのです。運命には従わなければなりません」