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忘れられし花
第15章 友達
やがて光は、静かに頭を下げた。
「ご馳走様でした。友達はこれでおしまいにしてくださって構いません。わずかな時間でしたが、大変楽しい時間を過ごさせていただきました。心から感謝いたします」
「どういう事だ?」
貴雅は驚いた。こんな短時間だけの友達など意味がわからない。
「鷹取家に戻ったら、私は屋敷から出ることは許されません。ここへも二度と来ることはできないでしょう。私のことは、今日限りでどうかお忘れくださいますよう」
いつもにこやかな光につい忘れがちになるが、ここへはあくまで拉致されてきたに過ぎない。鷹取家へ帰ればまた極少数の人々に囲まれ、静かに日々を暮らしていくのだ。貴雅や貴晴にも二度と会うことができないと、光には初めからわかっていた。
「失礼ですが、友達とはそう簡単にやめられるものではありません」
高坂が光を抱き上げ、再び寝室に運んだ。高坂の後をついてきた貴晴も同調する。
「そうです、光様。たとえ二度と会うことができなくとも、僕たちと光様が友達であることに変わりはありません。それが本当の友達というものなのです」
「……本当の、友達?」
「はい。僕たちはずっと、光様と友達です」
光はその言葉を聞いて、微笑んだ。
この上なく、幸せそうに。
「取引の時間まで、少しだけでもお休みください。お加減が悪いと、鷹取の方々も心配なさいます」
「はい、ご配慮ありがとうございます」
横になった光を残し、三人は客間を出た。
取引の時間まではあと少し――。
「ご馳走様でした。友達はこれでおしまいにしてくださって構いません。わずかな時間でしたが、大変楽しい時間を過ごさせていただきました。心から感謝いたします」
「どういう事だ?」
貴雅は驚いた。こんな短時間だけの友達など意味がわからない。
「鷹取家に戻ったら、私は屋敷から出ることは許されません。ここへも二度と来ることはできないでしょう。私のことは、今日限りでどうかお忘れくださいますよう」
いつもにこやかな光につい忘れがちになるが、ここへはあくまで拉致されてきたに過ぎない。鷹取家へ帰ればまた極少数の人々に囲まれ、静かに日々を暮らしていくのだ。貴雅や貴晴にも二度と会うことができないと、光には初めからわかっていた。
「失礼ですが、友達とはそう簡単にやめられるものではありません」
高坂が光を抱き上げ、再び寝室に運んだ。高坂の後をついてきた貴晴も同調する。
「そうです、光様。たとえ二度と会うことができなくとも、僕たちと光様が友達であることに変わりはありません。それが本当の友達というものなのです」
「……本当の、友達?」
「はい。僕たちはずっと、光様と友達です」
光はその言葉を聞いて、微笑んだ。
この上なく、幸せそうに。
「取引の時間まで、少しだけでもお休みください。お加減が悪いと、鷹取の方々も心配なさいます」
「はい、ご配慮ありがとうございます」
横になった光を残し、三人は客間を出た。
取引の時間まではあと少し――。