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忘れられし花
第16章 取引
高坂はすぐに長身の男性を伴って戻ってきた。身なりや態度からすると鷲尾貴雅で間違いないだろう。貴雅は年の頃はおよそ二十代後半。鋭角的な顔立ちから、名前の通り鷲のような印象を受けた。
「鷲尾家当主、鷲尾貴雅だ。私は面倒なやり取りは好まない。早速だが、鷹取家の返答を聞かせていただこう」
貴雅は単刀直入に切り出した。無駄を排するその様子は、いかにも実利を重んじる型の人間に見えた。
「いいだろう。要求通り、谷津鉱山からは一切の手を引く。その代わり兄はこちらに返してもらうぞ。文句はないな?」
馨は声に力を込めた。貴雅をまっすぐに見返す。貴雅に比べれば若輩だが、鷹取家当主として、貴雅に負けるわけにはいかないのだ。
馨の返答に光が身を強ばらせたのが、すぐ傍にいた奏にはわかった。固く握りしめられた光の手に、寄り添うように優しく手を重ねる。
「では、この書面に署名しろ。それで終わりだ」
「わかった」
馨は書面の内容を確認し、ペンをとった。署名をし、書面を貴雅に手渡すと、実に呆気なく両家の取引は終了した。
「鷲尾家当主、鷲尾貴雅だ。私は面倒なやり取りは好まない。早速だが、鷹取家の返答を聞かせていただこう」
貴雅は単刀直入に切り出した。無駄を排するその様子は、いかにも実利を重んじる型の人間に見えた。
「いいだろう。要求通り、谷津鉱山からは一切の手を引く。その代わり兄はこちらに返してもらうぞ。文句はないな?」
馨は声に力を込めた。貴雅をまっすぐに見返す。貴雅に比べれば若輩だが、鷹取家当主として、貴雅に負けるわけにはいかないのだ。
馨の返答に光が身を強ばらせたのが、すぐ傍にいた奏にはわかった。固く握りしめられた光の手に、寄り添うように優しく手を重ねる。
「では、この書面に署名しろ。それで終わりだ」
「わかった」
馨は書面の内容を確認し、ペンをとった。署名をし、書面を貴雅に手渡すと、実に呆気なく両家の取引は終了した。