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忘れられし花
第17章 目覚めよと呼ぶ声あり
鷹取家へ戻った翌日、光は高熱を発した。高坂の診断によると、極度の心労からくる発熱ということだった。鷲尾家という慣れない環境は、体の弱い光に想像以上の負担をかけていたらしい。高坂は手を尽くしてくれてはいたものの、発熱から一週間を過ぎても熱は一向に下がる気配を見せなかった。
奏は光の白い額に浮かんだ汗を優しく拭うと、苦しげにうなされ浅い呼吸を繰り返す光を心配そうに見つめた。一週間以上ずっと、こうしてうなされ続けているのだ。発熱は、体が病と闘っているために起こるのだと、高坂から聞いた。虚弱な光は生まれてからずっと、己の体を襲う病と闘ってきたのだ。奏は時間が許す限り、光の細い手を握って名を呼び、回復を祈り続けた。
それから幾日も経った日の朝。
眠り続ける光の瞼が微かに揺れた。奏は息を詰め、静かに光に呼びかけた。
「光様……?」
「……はい」
ゆっくりと目を開けた光は、か細い小さな声で答えた。
「光様! よかった……っ!」
光は奏を探すように、見えない薄い水色の瞳を動かすと、手を伸ばして奏の頬に触れた。
「奏……。泣いているのですか……?」
光の指に触れた奏の頬は、涙で濡れていた。
「もう、二度と目を覚まさないんじゃないかと、心配しました」
「……あなたが私の名を呼ぶ声が聞こえましたから」
「え?」
光は奏の頬に当てていた手をゆっくりと下ろし、消え入りそうな声で話し始めた。
奏は光の白い額に浮かんだ汗を優しく拭うと、苦しげにうなされ浅い呼吸を繰り返す光を心配そうに見つめた。一週間以上ずっと、こうしてうなされ続けているのだ。発熱は、体が病と闘っているために起こるのだと、高坂から聞いた。虚弱な光は生まれてからずっと、己の体を襲う病と闘ってきたのだ。奏は時間が許す限り、光の細い手を握って名を呼び、回復を祈り続けた。
それから幾日も経った日の朝。
眠り続ける光の瞼が微かに揺れた。奏は息を詰め、静かに光に呼びかけた。
「光様……?」
「……はい」
ゆっくりと目を開けた光は、か細い小さな声で答えた。
「光様! よかった……っ!」
光は奏を探すように、見えない薄い水色の瞳を動かすと、手を伸ばして奏の頬に触れた。
「奏……。泣いているのですか……?」
光の指に触れた奏の頬は、涙で濡れていた。
「もう、二度と目を覚まさないんじゃないかと、心配しました」
「……あなたが私の名を呼ぶ声が聞こえましたから」
「え?」
光は奏の頬に当てていた手をゆっくりと下ろし、消え入りそうな声で話し始めた。