この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
忘れられし花
第17章 目覚めよと呼ぶ声あり
 鷹取家へ戻った翌日、光は高熱を発した。高坂の診断によると、極度の心労からくる発熱ということだった。鷲尾家という慣れない環境は、体の弱い光に想像以上の負担をかけていたらしい。高坂は手を尽くしてくれてはいたものの、発熱から一週間を過ぎても熱は一向に下がる気配を見せなかった。

 奏は光の白い額に浮かんだ汗を優しく拭うと、苦しげにうなされ浅い呼吸を繰り返す光を心配そうに見つめた。一週間以上ずっと、こうしてうなされ続けているのだ。発熱は、体が病と闘っているために起こるのだと、高坂から聞いた。虚弱な光は生まれてからずっと、己の体を襲う病と闘ってきたのだ。奏は時間が許す限り、光の細い手を握って名を呼び、回復を祈り続けた。

 それから幾日も経った日の朝。
 眠り続ける光の瞼が微かに揺れた。奏は息を詰め、静かに光に呼びかけた。

「光様……?」
「……はい」

 ゆっくりと目を開けた光は、か細い小さな声で答えた。

「光様! よかった……っ!」

 光は奏を探すように、見えない薄い水色の瞳を動かすと、手を伸ばして奏の頬に触れた。

「奏……。泣いているのですか……?」

 光の指に触れた奏の頬は、涙で濡れていた。

「もう、二度と目を覚まさないんじゃないかと、心配しました」
「……あなたが私の名を呼ぶ声が聞こえましたから」
「え?」

 光は奏の頬に当てていた手をゆっくりと下ろし、消え入りそうな声で話し始めた。
/113ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ