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忘れられし花
第17章 目覚めよと呼ぶ声あり
「長い長い夢の中、遠くで私を呼ぶ、あなたの声が聞こえました。ですが私は歩けないためあなたの元へ行くことができません。途方に暮れていると松永が私を抱いて、あなたの声がするところまで連れてきてくれたのです」
苦しいのか、光は一旦言葉を切り、何度か大きく喘いだ。
「松永は私に、まだここに来てはいけない、と言いました。私が目覚めるのを待ち望んでいる人が大勢いるからと……」
「光様……」
「あなたの声が聞こえたとき、あなたの元に帰りたいと、思ってしまいました。私は……生きているべきではないのに……」
「そんなことはありません! 光様は生きていていいんです!」
生と死の狭間をさまよう光は、心もまた、生と死の間を絶えず揺れ動く。
「僕や馨様、鷲尾家の方も皆、光様が目覚めるのを待っていました」
「……優しい方々に囲まれて、私は幸せ者ですね……」
光は冬の日差しのように淡く微笑んだ。夢見るような、綺麗な眼差し。見えないのが嘘みたいだ。
だが奏は知っている。
一番優しいのは光自身だ。どんなに苦しくても辛くても、すべて微笑みに押し隠し、真っ先に他人を思いやる。だから奏は過酷な宿命を負う光を支え、ともに歩みたいと願う。
「光様は皆の『光』なんです。光様がいなくなってしまっては、世界から光が消えてしまいます。だから光様は生きてください。皆、光様のことが大好きなんです」
「ありがとう……ございます……」
光はゆっくり目を閉じた。規則正しく布団が上下するのを確認し、奏は静かに襖を閉めた。
苦しいのか、光は一旦言葉を切り、何度か大きく喘いだ。
「松永は私に、まだここに来てはいけない、と言いました。私が目覚めるのを待ち望んでいる人が大勢いるからと……」
「光様……」
「あなたの声が聞こえたとき、あなたの元に帰りたいと、思ってしまいました。私は……生きているべきではないのに……」
「そんなことはありません! 光様は生きていていいんです!」
生と死の狭間をさまよう光は、心もまた、生と死の間を絶えず揺れ動く。
「僕や馨様、鷲尾家の方も皆、光様が目覚めるのを待っていました」
「……優しい方々に囲まれて、私は幸せ者ですね……」
光は冬の日差しのように淡く微笑んだ。夢見るような、綺麗な眼差し。見えないのが嘘みたいだ。
だが奏は知っている。
一番優しいのは光自身だ。どんなに苦しくても辛くても、すべて微笑みに押し隠し、真っ先に他人を思いやる。だから奏は過酷な宿命を負う光を支え、ともに歩みたいと願う。
「光様は皆の『光』なんです。光様がいなくなってしまっては、世界から光が消えてしまいます。だから光様は生きてください。皆、光様のことが大好きなんです」
「ありがとう……ございます……」
光はゆっくり目を閉じた。規則正しく布団が上下するのを確認し、奏は静かに襖を閉めた。