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忘れられし花
第18章 花嵐
「成人できないだろうと言われた私も、松永や色々な方のお陰で、こうして成人することができました。ですがもとより虚弱な体です。この先そう長くは生きられないでしょう。あなたには、これからの人生をあなたに相応しい場所で生きて欲しいのです。ご両親の元へ帰れないのなら、馨様にどこかもっと良い働き口を探していただいてください。私といては、あなたのためになりません」
「そんなの絶対に嫌です! 僕は光様の傍にいたいんです! 光様は僕が嫌いですか?」
「いいえ」

 光は膝の上で、祈りを捧げるかのように、ほっそりとした指を組んだ。

「いいえ。私はあなたの見ていない場所で、ひっそりと死にたいのです。次第に病み衰えていく姿を、あなたに見せたくはありません」

 背を伸ばして静かに微笑む光は、誇り高く咲く白百合の花のようだった。

「大丈夫です。光様はまだ死にません。僕が保証します。でも、光様は僕が傍にいて支えていないと、このまま空気に溶けて消えてしまいそうです。だから――」

 奏は一句一句区切るようにゆっくりと光に告げた。

「だから、光様。僕を、貰ってください」

 奏は包み込むように、慈しむように、光を抱き締めた。
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