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忘れられし花
第18章 花嵐
「正式に、です。光様。馨様はすでに承諾済みです」
「……馨様。どういうことでしょうか」
突然のことで驚く光に、馨は奏を光の正式な男妾とすることを告げた。
光はすぐにどういうことなのか理解したが、イヤイヤをする子供のように首を振り、二人から顔を背けた。
「それはできません。私は奏を、私や鷹取家に縛り付けたくはありません。忌み子と人生を共にするなど、愚の骨頂です」
奏は光が顔を背けた側に回り込んだ。行儀よく膝に置かれた手を握り、何とか光を説得しようと試みる。
「どうしてですか? 光様と一緒にいられるなら、僕は愚かだってなんだっていいです。光様が忌み子だって関係ありません。僕は……、僕は、光様を愛しています! だから、光様、僕を貰ってください!」
光はもう一度、奏と反対側に顔を背けた。苦しげに眉を寄せ、俯いて固く拳を握った。盲目の光はいつも敏感に人の心を感じ取る。そんな光が、奏の想いに気づかぬはずもない。けれど、だからからこそ光は苦しんでいた。
「できるはずがありません。私とてあなたを心の底から愛しています。だからこそ、先の短く体の不自由な私に、あなたを縛り付けることなどできません。私は、あなたを縛り付ける私自身の不甲斐ない体が許せないのです!」
愛を告げるにしてはあまりにも苦悩に満ちた、血を吐くような叫び。
自らの不自由な体に対して、光が秘めていた感情を露にするのは、これが初めてだった。
「……馨様。どういうことでしょうか」
突然のことで驚く光に、馨は奏を光の正式な男妾とすることを告げた。
光はすぐにどういうことなのか理解したが、イヤイヤをする子供のように首を振り、二人から顔を背けた。
「それはできません。私は奏を、私や鷹取家に縛り付けたくはありません。忌み子と人生を共にするなど、愚の骨頂です」
奏は光が顔を背けた側に回り込んだ。行儀よく膝に置かれた手を握り、何とか光を説得しようと試みる。
「どうしてですか? 光様と一緒にいられるなら、僕は愚かだってなんだっていいです。光様が忌み子だって関係ありません。僕は……、僕は、光様を愛しています! だから、光様、僕を貰ってください!」
光はもう一度、奏と反対側に顔を背けた。苦しげに眉を寄せ、俯いて固く拳を握った。盲目の光はいつも敏感に人の心を感じ取る。そんな光が、奏の想いに気づかぬはずもない。けれど、だからからこそ光は苦しんでいた。
「できるはずがありません。私とてあなたを心の底から愛しています。だからこそ、先の短く体の不自由な私に、あなたを縛り付けることなどできません。私は、あなたを縛り付ける私自身の不甲斐ない体が許せないのです!」
愛を告げるにしてはあまりにも苦悩に満ちた、血を吐くような叫び。
自らの不自由な体に対して、光が秘めていた感情を露にするのは、これが初めてだった。