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忘れられし花
第18章 花嵐
「私も普通の体に、忌み子ではない普通の子供として生まれたかったと、どれだけ願ったことでしょう! 見ることも歩くこともできず、外に出ることも許されず、この部屋でただ一人横になっているだけの日々を、運命を、どれだけ呪ったことでしょう! 本当は、あなたと共に生きたいと、どれだけ願ったことでしょう……。でも、それはできないのだと、それが私の背負った業なのだと、ずっと自分自身に言い聞かせて今日まで生きてきました。今さら幸せになど、なれるはずがありません……」

 辛くないわけがない。
 苦しくないわけがない。
 
 すべてを諦めること。
 それが光の二十年間の人生だった。

 光は呼吸を荒げ、そのままくずおれた。細い肩を激しく震わせる。布団に伏せ体を震わせる光に、奏は声をかけることができなかった。

 いつでも優しく微笑みながら、光は己の背負った重荷に、本当はずっと苦悩し苦しんでいた。微笑みの下の苦しみを、苦悩を見抜けなかった奏に、一体何が言えるだろう。奏は表に見える光の優しさに、ただ甘えているだけだった。
 そんな奏が光を愛しているなどと、どうして言えただろう。

 部屋に響く雨音は一段と激しさを増し、いつしか春の嵐になっていた。
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