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第5章 狂いそうだ…

親父がお袋の生活費を渡すついでに俺は時々お袋と会う約束になっている。今日はその約束の日だ。最近の親父は俺にその金だけを預けてお袋とは会おうとはしない。

だったら振込にしろよ。

俺は水原の親父に言ってやる。親父は

『半人前には親の気持ちはわからんな。』

とだけ偉そうに言いやがる。

親らしい事なんか全く何もなかったくせに…。

俺は親父にそう思う。思ってはいてもどうせ日本語が通じる相手ではないから諦める。

親父から金を受け取るとお袋との待ち合わせ場所に出掛ける。この時は俺は運転手は付けない。お袋と会ったのはちょうど昼飯時だった。俺はお袋に

『なんか食いたいものあるか？』

と聞いてみる。お袋は少し寂しそうな顔で

『優誠、ますますパパに似て来たね。』

と俺に言う。お袋は今は一応彼氏がいる。だけど水原の条件が新しい男と結婚をしたらもう生活費は出さないという条件だからその男は彼氏止まりの男だ。

結局、お袋は懲りずにクズな男をまたしても選んだって事だ。そんなお袋と飯を食ってても俺には何の感情もわかない。

俺は俺の子には絶対にこんな俺みたいになって欲しくないなといつも思う。だからこそ結婚をする女は本気になれる１人だけにすると俺は決めていた。お袋は飯を食いながら

『今日は時間あるの？』

と聞いて来る。俺は

『夕方から用事がある。』

とだけ言う。やっぱりお袋は俺に対して寂しそうな顔をする。突然お袋が

『ねぇ、優誠。水原も御剣からも逃げようか？』

と言い出した。

今更か？

俺はお袋にそう思う。

水原は全国規模の組織、御剣は全国規模の会社。

海外じゃない限り逃げられる訳がないから俺は今の状況なんだろ？

俺はお袋に

『逃げたいのならお袋だけが行けよ。』

と答える。お袋だけなら誰も追わない。お袋は今更みたいに

『ごめんね…。』

と呟くように俺に言う。俺はそんなお袋から逃げたい気分だった。適当に買い物をしてからお袋をお袋の男が待つ家まで送る。

お袋と別れた後に俺は１人になってから考える。

狂いそうだ…

俺はこの歳になっても未だに親にいいように振り回されている。俺を自由にしてくれと俺はイライラとしたまま美奈の家に向かった。