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記憶の彼方に眠る恋
第6章 両親の決断、紗友莉たちの苦悩
 その日の夕方、鳴澤は綾子を家まで送りながら、完全に自分の気持ちを認めていた。
 恋愛感情が一切ない相手とデートして、これほどまで楽しめないだろうというレベルまで、鳴澤は綾子とのデートを楽しんだからだ。
 絶対に、罪悪感や後ろめたさではなく、綾子に対して恋をしていると自覚した鳴澤は、綾子のアパート前にたどり着いたとき、立ち止まって言った。
「今日は本当にありがとう。こんなに楽しかったのは久々だ」
「こちらこそありがとうございます。私もすごく楽しかったです! また是非誘ってくださいね」
「うん、もちろん。あと……。ちょっと大事な話があるけど、聞いてくれる?」
 不思議そうな顔で、頷く綾子。
 鳴澤は意を決して言った。
「坂井さんのことが好きだ。交際してほしい」
 一瞬驚いた綾子は、すぐさま気を取り直して答える。
「実は私も、ずっと前から好きでした。……でも、本当に私なんかで、いいんですか?」
「君じゃなきゃダメなんだ」
 そう言うと、冷静沈着な鳴澤らしくもなく、なんと往来だというのに、綾子を強く抱き寄せた。
 綾子のほうも、鳴澤の胸に顔を埋めながら、グッと強く抱き着いていく。
 そのまましばし抱き合う二人に、もう言葉は必要なかった。
 数十秒後、身体を離した綾子は、鳴澤の手を取り、自室へと案内していく。
 綾子の温かい手の感触に、心まで温かくなりながら、鳴澤は綾子の後に続いて、アパートの階段を上がった。
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