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第3章 事故

　ということで、普段であれば、車窓からの景色をのんびり眺めていたはずの紗友莉だったが、拓麻のことに関する心配と不安でいっぱいの今は、とてもそのような気持ちの余裕はない。
　それでも、そういう気持ちを少しでも紛らわそうという意図もあり、紗友莉はイヤホンで音楽を聴きながら、窓の外を流れる景色をぼんやり眺めていた。
　紗友莉の乗車駅を出発してから既に１時間半が経過しており、景色は徐々に自然豊かな色合いを深めている。
　紗友莉の故郷は、普段生活している地と比べると遥かに自然豊かで、歯に衣着せぬ物言いの美香に言わせれば「田舎」という雰囲気だ。
　なので、車窓からの景色の変化は、「故郷へとどんどん近づいている」ということを紗友莉に感じさせた。
　遠方に連なる山々を見つめながら、昔を回想する紗友莉。
　紗友莉が幼少期を過ごした頃の故郷は、現在よりもさらに自然が残っており、同じく幼かった拓麻と共に野山を駆け回って遊んだものだった。
　春夏秋冬、四季折々の風景が鮮やかに脳裏に甦り、紗友莉は懐かしさに思わず目を細める。
　そのとき流れた車内アナウンスにより、あと数十分ほどで故郷の駅へ到着することを紗友莉は知った。