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ずっと傍に……
第34章 見えない想い…
「その時、私たちは新婚でね。この人がいない人生っていうのが想像もできなかった。この温もりが消えてなくなると思うと…恐怖でしかなかった。だから目が覚めた時はうれしかったし、もう二度とこんな思いはしたくないと…そんな約束をさせてしまったね」
女将さんは大将を見てフフフッ笑う。
その笑顔がかわいいと思い、幸せなんだなと思わせた。
「女将さんの気持ち…分かります。自分より長生きしてほしい…そう思うのは愛している証拠だから…」
「陽葵さん…」
友紀也との事を知っている高梨先生は、私の手を握って心配そうに見つめてくる。
「同じような経験をしたことあるようだね」
大将の言葉に小さく頷いた。
普段だったら話さない事も、同じような経験をした女将さんに聞いて欲しかった。
「私…一度結婚しているんです…夫は癌が見つかって余命宣告受けました。彼は私から離れることを選びましたが…私は最後まで見届ける事を選びました。」
「陽葵さん?」
話始めた私を心配する高梨先生に微笑んで見せる。
「大丈夫です…ただ…ふたりに聞いて欲しくて…」
そう伝えると、高梨先生は穏やかに笑った。