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ずっと傍に……
第43章 託された想い…
「ごめんなさい…こんなこと聞かされても迷惑ですよね」
俺の胸から顔を上げた志保さんは健気にも笑って告げる。
「大丈夫です…。泣けるときに泣いていた方がいい…友紀也さんの前では泣けないでしょう?」
「ありがとう…でも、大丈夫…泣いたらすっきりしちゃった」
そう言われたら何も言えなくなった。
それでも辛かったら俺を頼って欲しいと伝えて、LINEの交換をした。
それから志保さんからの連絡はなかった。
ただ病院内で挨拶をするだけでこれと言って変化はなかった。
「こんにちは」
天気が良く、母さんを連れて中庭を散歩していると桜木が声をかけてきた。
いつもの調子で返事をしたのがまずかった。
「あっ、桜木…先生…」
そう言った瞬間、桜木が瞳を見開いて、そしてゆっくりと息を吐いた。
「僕のこと、気がついていたんですね」
その言葉で、自分が友紀也さんではなく桜木と言ってしまったと気がついた。
だけど、気がついても遅い。
どう繕ってもどうにもならなかった。