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ずっと傍に……
第43章 託された想い…
「知らずに過ごすより、知って傍にいる方が陽葵の幸せだと言いたそうですね」
全てを見抜かれているようでドキッとする。
桜木はこんなにも人の心を見据えるような先生だったんだろうかと学生時代の桜木を思い出す。
それでも思い出すのは陽葵が追いかけ回している嫌な先生のイメージしかない。
「僕はずっと陽葵を見てきました。だから分かるんです。弱って行く僕を見続けるのは陽葵には酷すぎて受け止められないと…。陽葵は優しい子です。志保の様に僕の前では気丈に振舞うでしょう。それでもひとりになると苦しむのは目に見えています。だったら何も知らずに別れた方が良い…死に行く僕を見続ける辛さに比べたら普通に別れた方が一時の辛さですむんです。別れた当初は辛いでしょうが、後々を考えればそれが最善だと思います。」
どこを見るでもなく、真正面を見つめて淡々と言葉にする。
その言葉の意味を理解するにつれて、俺の心の中は言いようのない悲しみが充満する。