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ずっと傍に……
第46章 生きていてほしいから…
「逃げていく後ろ姿を見たんですよ…陽葵には風で本が倒れたと嘘をついたので見られていたとは知りません…年頃のキミに見られてしまって驚きましたが…」
「はぁ…さすがに刺激は強すぎましたけど…それでも陽葵の想いが通じてよかったと思ったんですよ。」
「そうですか…本当に蒼くんが陽葵の弟でよかった…これからも陽葵の力になってあげてくださいね」
桜木先生は、俺に頭を下げた。
その言葉が俺の中から消えることはなかった。
それから一年後、陽葵に見守られながら桜木先生は息を引き取った。
誰もが悲しみに明け暮れる中、葬儀は着々とおこなわれる。
横たわる桜木先生の表情を見ても、今にも起き出して蒼くんと呼ばれそうな気がしてならなかった。
だけど火葬場に移動して、それは叶わない願いなのだと分かる。
もう話すことも触れることもできないのだと実感する。
「桜木…先生…」
涙が止まらない。
誰もがそうだった。
だから気がつかなかった。