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ずっと傍に……
第20章 出逢った意味…
「ありがとう…でも、食べ終わったから帰るところなの…恭平…邪魔してごめんね」
一度も言葉を発することのない恭平さんに一言かけて彼女は出口に向かって歩き出した。
「恭平さん…追いかけて話して来たらどうですか?」
見えなくなった彼女とどうしても話をして欲しくて声をかけても、恭平さんは何も喋らず黙っていちごを口に運んだ。
その表情から読み取れることはひとつだった。
「恭平さん、私に言いましたよね。ちゃんと終わらせてないから辛いんだって…その言葉、そのまま恭平さんに返します…私の事救えたら前に進めるかもって…あれ違いますよね。恭平さんが彼女と向き合わない限り前には進めないですよね」
恭平さんは黙って聞きながら、皿に乗っていた果物を頬張り動こうとはしなかった。
大地くんは私たちの事を『傷の舐めあい』だと言った。
それでお互いが救われるのならそれでもいいと思う。
だけど一歩踏み出せば目の前に広がる霧が晴れるというのならば、私は恭平さんの背中を押したい。
また一人ぼっちになるかもしれないけど、浮上できるかもしれないチャンスを逃して欲しくなかった。