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ずっと傍に……
第22章 幻でもいい…
「僕を拾ってくれてありがとう…キミの心が癒されるまで…傍にいてあげる…全てを愛してあげる。」
彼はにっこりと微笑み、私の手を引いて歩き出した。
雨に濡れながらゆっくりと歩く私たちに、すれ違う人たちの訝し気な顔。
そんな周りの目など気にすることもなく、友紀也と共に暮らしたマンションに向かった。
マンションのエントランスに到着して、何も持たずに来たことを思いだした。
スマホもなければ家の鍵さえない。
びしょぬれになりながら途方に暮れていると、駐在していると管理人さんの真鍋さんが慌てて駆け寄ってくる。
「陽葵さん。どうされたんですか?」
「鍵…忘れてきてしまって…」
「あー…鍵ですね。マスターキーがありますので、それを使ってください。」
エントランスの中に入れてもらい、真鍋さんは急いでマスターキーを取りに行ってくれた。
戻ってきた真鍋さんから鍵を受け取りエレベーターの前で待つ。
「陽葵さん…気を落とされませんように…」
真鍋さんは言いにくそうに口を開いた。
そう言えば、友紀也のお通夜に顔を出していただいたような覚えがあった。